評伝

拙文:「読書 小林公ニ『アウシュヴィッツを志願した男』講談社 “巨悪”に抗い続けた生涯」、『聖教新聞』2015年07月25日(土)付。

- 読書 アウシュヴィッツを志願した男 小林公ニ 著“巨悪”に抗い続けた生涯 ナチスの絶対悪の象徴であるアウシュヴィッツ絶滅収容所。生還者の一人プリーモ・レーヴィが「人間であることの恥辱」と読んだ過酷な世界に自ら志願した人間がいる。ポーランド軍大…

覚え書:「テロリズムに抗する思想 アルベール・カミュに学ぶ 寄稿 桃井治郎」、『毎日新聞』2015年04月20日(月)付夕刊。

- テロリズムに抗する思想 アルベール・カミュに学ぶ 寄稿 桃井治郎(中部大学国際関係学部講師、国際関係学) (写真キャプション)チュニスのバルドー博物館周辺で行われたイスラム過激派に抗議する行進で、チュニジアの国旗を振る市民たち=3月29日、…

拙文:「読書:中田整一『ドクター・ハック』平凡社 戦中、日米間の和平工作に奔走」、『聖教新聞』2015年04月25日(土)付。

- 読書ドクター・ハック 中田整一 著戦中、日米間の和平工作に奔走 戦前・戦中日本の行く末を決定付ける局面に必ずその姿を現わすのが、ドイツ人エージェント、ドクター・ハックことフリードリヒ・ハックだ。 女優・原節子のデビュー作となる日独合作映画「…

書評:石光勝『生誕101年 「カミュ」に学ぶ本当の正義』新潮社、2014年。

石光勝『生誕101年 「カミュ」に学ぶ本当の正義』新潮社、読了。カミュの探求を「正義」と捉え、その生涯と思索を、15本の「映画」で辿る異色のカミュ伝。仕掛けの多い構成ながら抜群に「読ませる」一冊だ。著者は若き日、カミュに傾倒したテレビマン。…

覚え書:「記者の目:経済学者、故・宇沢弘文氏のこと=客員編集委員・原剛(早稲田環境塾塾長)」、『毎日新聞』2014年10月23日(木)付。

- 記者の目:経済学者、故・宇沢弘文氏のこと=客員編集委員・原剛(早稲田環境塾塾長) 毎日新聞 2014年10月23日 東京朝刊(写真キャプション)CO2排出削減について力説する宇沢弘文氏=原剛撮影 ◇野生知と美学の人 日本海に近い新潟大学教員宿舎の夜更け…

覚え書:「今週の本棚 仏教学者中村元 植木雅俊著」、『毎日新聞』2014年08月31日(日)付。

- 今週の本棚 仏教学者 中村元 植木雅俊著 角川選書・1944円 高名な仏教学者・インド哲学者の一生を、晩年の門弟という視点から描いたものである。 中村元(はじめ)は博覧強記を絵に描いたような大学者で、サンスクリット語をはじめ、パーリ語、チベッ…

覚え書:「書評:植木雅俊『仏教学者 中村元 求道とことばの思想』(角川学芸出版) 多角的な思想の全軌跡=前田耕作」、『週刊読書人』2014年08月22日(金)付。

- 書評 植木雅俊・著 仏教学者 中村元 求道のことばと思想前田耕作多角的な思想の全軌跡活動的な生涯とその開かれた視線をあますところなく活写 1979年12月末、ブレジネフはソ連軍のアフガニスタン侵攻を許可する書類に署名した。『広辞苑』(第3版・…

書評:「読書:『アダム・スミスとその時代』ニコラス・フィリップソン・著、永井大輔・訳、白水社」、『聖教新聞』2014年08月23日(土)付。

- 読書 アダム・スミスとその時代 ニコラス・フィリップソン・著 永井大輔・訳近代経済学の父の生涯と思想 近代経済学の父=アダム・スミスの最新の評伝である。その生涯と思想をバランスよく叙述する本書は、大部の著作ながら一気に読み通すことができる。 …

覚え書:「書評:仏教学者 中村元 植木雅俊・著 学究の生涯と業績描く評伝」、『中外日報』2014年08月08日(金)付。

- 書評 学究の生涯と業績描く評伝 仏教学者 中村元 求道のことばと思想 植木雅俊・著 本書は、人間ブッダに光を当て、ひろく仏教の魅力を伝えた中村元の生涯と業績をたどりながら、その思想の「輪郭」と「核心」を明らかにした評伝だ。 若き日の中村は、哲学…

書評:ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年。

ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、読了。『想像の共同体』の著者が、その地域研究の軌跡を振り返りながら、学問とは何か縦横に論じた一冊。抜群に面白い。学問で重要なのは、大学の制度や母国といった「ヤシガラ椀」…

書評:進藤久美子『市川房枝と「大東亜戦争」 フェミニストは戦争をどう生きたか』法政大学出版局、2014年。

進藤久美子『市川房枝と「大東亜戦争」 フェミニストは戦争をどう生きたか』法政大学出版局、読了。戦後の政治家としての評価とは裏腹に戦前・戦中の軌跡を評価するのが難しい市川房枝。一次資料にあたりながら、礼賛でも弾劾でもない抑制のとれた筆致でその…

拙文:「書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子・著」、『聖教新聞』2014年05月24日(土)付。

- 書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子著自分で「考える」契機生む 20世紀を最も真摯(しんし)にかつ激しく生き抜いた女性哲学者の代表こそハンナ・アーレントであろう。 ユダヤ人ゆえにドイツから亡命し、人間を「無効化」する全体主義と対決した。『全…

書評:片桐庸夫『民間交流のパイオニア 渋沢栄一の国民外交』藤原書店、2013年。

片桐庸夫『民間交流のパイオニア 渋沢栄一の国民外交』藤原書店、読了。近代日本における資本主義興隆の父・渋沢栄一は、晩年を民間外交に捧げ、「対米・中・韓関係の改善に尽力」(帯)した生涯だったという。本書はその全体像を明らかにする試み。通商関係…

書評:一坂太郎『司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰・龍馬・晋作の実像』集英社新書、2013年。

一坂太郎『司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰・龍馬・晋作の実像』集英社新書、読了。「司馬で歴史を学んだ」という人が後を絶たないように、日本人の歴史観に大きな影響を与えたのが司馬遼太郎。しかし司馬小説はあくまでフィクションであり歴史教科書では…

書評:川久保剛『福田恆存 人間は弱い』ミネルヴァ書房、2012年。

川久保剛『福田恆存 人間は弱い』ミネルヴァ書房、読了。常に人間の本質を見つめ続けた批評家・福田恆存。 「人間は弱い」(副題)との自覚こそ福田の出発点であり徹底的な懐疑の源泉である。本書は保守派論客の軌跡と探究を甦らせる初の本格的評伝。福田に…

書評:中見真理『柳宗悦 「複合の美」の思想』岩波新書、2013年。

中見真理『柳宗悦 「複合の美」の思想』岩波新書、読了。民藝運動の先駆者は、アイヌや沖縄といった帝国の辺境になぜ目を向けるのか−−。その謎を解くカギが「複合の美」。相互尊敬に基づく「複合の美」とは文化的多元性の尊重する態度である。柳の場合、それ…

書評:坪内祐三『探訪記者 松崎天民』筑摩書房、2011年。

坪内祐三『探訪記者 松崎天民』筑摩書房、読了。明治から昭和にかけ、木賃宿や娼窟、女学生ルポなどを、地を這う取材を基に読ませる名文で綴り、足尾銅山、大逆事件、精神病院を取材した探訪記者の本格的評伝。「探訪記者」とは現代でいえばルポルタージュの…

覚え書:「悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者」、『毎日新聞』2013年09月23日(月)付。

- 悼む ロバート・ベラーさん 米宗教社会学者 7月30日死去・86歳魅力的な思考展開 ロバート・ベラーはいかにも学者らしい学者だったが、また荒野を彷徨い、神に問いかける預言者のようでもあった。ウェーバーやデュルケム以来の、人類史的・文明史的な…

覚え書:「素顔の新美南吉―避けられない死を前に [著]斎藤卓志 [評者]出久根達郎」、『朝日新聞』2013年07月14日(日)付。

- 素顔の新美南吉―避けられない死を前に [著]斎藤卓志 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年07月14日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■聞き書きで創作の実態明らかに 「里にいでて手袋買ひし子狐(こぎつね)の童話のあはれ雪降るゆふべ」。美智子皇后の…

覚え書:「トロツキー(上・下) [著]ロバート・サーヴィス [評者]保阪正康」、『朝日新聞』2013年07月14日(日)付。

- トロツキー(上・下) [著]ロバート・サーヴィス [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年07月14日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 表紙画像 著者:ロバート・サーヴィス、山形浩生 出版社:白水社 価格:¥ 4,200Amazon.co.jp楽天ブックス…

覚え書:「今週の本棚:川本三郎・評 『周五郎伝−虚空巡礼』=齋藤愼爾・著」、『毎日新聞』2013年06月30日(日)付。

- 今週の本棚:川本三郎・評 『周五郎伝−虚空巡礼』=齋藤愼爾・著 毎日新聞 2013年06月30日 東京朝刊 (白水社・3570円) ◇「苦労人の文学」が秘める豊かな慰藉の力 純文学と大衆文学が画然とわかれていた時代があった。その時代は、文壇では川端康成、…

書評というかファーストインプレッション:安部龍太郎『等伯』日本経済新聞出版、2012年。

ほんとは稿を改めて推敲したいのだけど、衝撃だったので、連twのまとめです。 『等伯』(上) 2012/05/17さて、とうとう、読み見ましたよ、上巻だけですが。安部龍太郎『等伯』日本経済新聞出版(直木賞)。評伝なので筋は横に置きますが、久しぶりに「感…

覚え書:「書評:竹山道雄と昭和の時代 平川祐弘著」、『東京新聞』2013年5月19日(日)付。

- 竹山道雄と昭和の時代 平川祐弘 著 2013年5月19日 [評者]勝又浩=文芸評論家 ◆真の教養人の自由な精神 市川崑監督によって二度も映画化された『ビルマの竪琴』は、その原作である新潮文庫版も読み継がれて版を重ねている。一つの国民文学だと言ってもよ…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『建築家、走る』=隈研吾・著」、『毎日新聞』2013年05月19日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『建築家、走る』=隈研吾・著 毎日新聞 2013年05月19日 東京朝刊 (新潮社・1470円) ◇「場所」と「身体」を鍵に、自らの軌跡を語る 今年四月、新歌舞伎座がオープンした。その建築を手がけたのが本書の著者、隈研吾。それな…

覚え書:「書評:鉞子―世界を魅了した「武士の娘」の生涯 [著]内田義雄 [評者]出久根達郎」、『朝日新聞』2013年05月12日(日)付。

- 鉞子―世界を魅了した「武士の娘」の生涯 [著]内田義雄 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年05月12日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■隠れた名著の素性、明らかに 司馬遼太郎の長篇(ちょうへん)『峠』は、主人公の河井継之助が上京を願って、長岡藩…

覚え書:「書評:諏訪根自子 [著]萩谷由喜子 [評者]出久根達郎」、『朝日新聞』2013年04月21日(日)付。

- 諏訪根自子 [著]萩谷由喜子 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年04月21日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■ナチスから贈られた名器の謎 ショックだったのは、この人の死が半年もたってから報じられたことだった。それも外国の新聞が亡き人として取り上…

覚え書:「書評:蟠桃の夢―天下は天下の天下なり [著]木村剛久 [評者]出久根達郎」、『朝日新聞』2013年03月31日(日)付。

- 蟠桃の夢―天下は天下の天下なり [著]木村剛久 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年03月31日 ■難解な思想書を解説する 帯の背に、「山片蟠桃(やまがたばんとう)の生涯」とある。そうに違いないが、普通の伝記と思って読むと面くらうだろう。主人公の顔形…

覚え書:「書評:森鴎外―日本はまだ普請中だ [著]小堀桂一郎 [評者]荒俣宏」、『朝日新聞』2013年03月31日(日)付。

- 森鴎外―日本はまだ普請中だ [著]小堀桂一郎 [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年03月31日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■破格の人間語る、700ページの「史伝」 取り扱われた森鴎外の事績が膨大に過ぎたのか、それとも著者の側で書くべき材料が溢(あ…

覚え書:「書評:児玉誉士夫 巨魁の昭和史 [著]有馬哲夫 [評者]後藤正治」、『朝日新聞』2013年03月31日(日)付。

- 児玉誉士夫 巨魁の昭和史 [著]有馬哲夫 [評者]後藤正治(ノンフィクション作家) [掲載]2013年03月31日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■米国公文書から足跡を探る 右翼、黒幕、政商……児玉誉士夫に載せられてきた形容である。ロッキード事件の被告となり…

書評:「里村欣三顕彰会編『里村欣三の眼差し』(吉備人出版)」、『第三文明』2013年5月、95頁。

- 書評 『里村欣三の眼差し』 里村欣三顕彰会編吉備人出版・2940円果敢に抵抗したヒューマニズム作家の実像 プロレタリア作家として活躍したのち、従軍作家として唯一戦死した文学者である「里村欣三ほど誤解され忌避(きひ)された作家は、この国の文学…