覚え書:「Life五話:番外編 情報あるほど現実に価値」、『朝日新聞』2015年01月18日(日)付。
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Life五話:番外編 情報あるほど現実に価値
2015年1月18日
「Windows95」が登場し、一般にもネットへの世界が開かれてから今年で20年。連載「Life五話」は、インターネットが溶け込んだ時代を生きる人々を描いた。これからの20年、ネット世界は私たちの生活にどんな影響をもたらすのか。関西学院大准教授の鈴木謙介さんに聞いた。
■20年後、変わらない
20年を振り返ってみると、ネットで出会ったり、就活したりしていますが、根本的には人間がする行為は変わっていない。これから先の20年も劇的な変化はないと思います。未来のこととなると、すごく変わりそうな気がしますが、これまで通りのことを、少し違ったやり方をするという話でしかありません。
社内連絡はメールでやりとりするというような変化はありましたが、いまはその揺り戻しがきています。例えば、ネット会社が朝のラジオ体操をする。メールで済んでしまうが故に、チームワークが築けないということがわかってきた。さらに、私たちがいつでもどこでも連絡が取れるようになったので、直接会いたい人に価値が出てきます。情報があるほど、現実でしかわからないことや空間が価値を持ってしまうのです。
■物同士データ交換
その上で、今後10年、20年でトレンドになるのは物と物がデータをやりとりする分野です。着用できる端末や、家電、自動車などがネットにつながり、人間を介さずにデータをやりとりするような動きが出てくるでしょう。
将来的には、物と物がやりとりしたデータを企業が使ってビジネスに生かしていくことが期待されます。その際に大事なのは、何万人の何年にもわたる記録を元に分析することです。そのためには、インフラとして誰でもアクセスできて、多くの人が使っている状態でないとデータとしての精度も増さない。多くの人の活動や天気などのデータを分析することで付加価値が生まれる。例えば、「来週は寒くなるから風邪を引きやすい」と予測ができる。
企業にデータを預けるかどうか、それは利便性を享受する私たちが判断していく必要があります。携帯電話が発売された時も会社員が会社に縛られるというような批判がありましたが、いまの私たちは望んでメールを送ったり、ラインをやったりしている。データで管理されているというイメージでいるうちに、いつの間にか定着したということになるのだと思います。
(聞き手・山田優)
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すずき・けんすけ 1976年生まれ。専門は理論社会学。ネット文化や消費文化に詳しく、著書に「ウェブ社会のゆくえ」など。
−−「Life五話:番外編 情報あるほど現実に価値」、『朝日新聞』2015年01月18日(日)付。
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http://www.asahi.com/articles/DA3S11557050.html