覚え書:「【書く人】女性を勇気づけたい 『霊の棲む島』 作家 カミラ・レックバリさん(40)」、『東京新聞』2015年01月18日(日)付。


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【書く人】

女性を勇気づけたい 『霊の棲む島』 作家 カミラ・レックバリさん(40)
 
2015年1月18日
 
 「四十代が最高!」。輝くような笑顔でそう言い切った。女優顔負けの美貌。ダンスで鍛えた体に、ぴったりしたヒョウ柄ワンピース。先日二度目の離婚をして、十二歳と五歳の息子、十歳の娘を育てる。現在の恋人は、二十七歳の格闘家。「仕事も育児も恋愛も、女として充実した人生」と話す。
 スウェーデンの小さな町で起きる事件を、作家のエリカと、夫で警察官のパトリックが解決する「エリカ&パトリック事件簿」シリーズは、世界で千五百万部を売る大ヒットになった。
 本好きの少女だったが、作家になるとは思いも寄らなかった。二十代で出版社の小説家養成講座に通い、そこで書いたシリーズ第一弾『氷姫』でデビュー。その後の躍進は前述の通りで、映画化もされた。
 「人を殺すという究極の行為の引き金となるのはどんなことなのか。悪を許容するのは難しいが、動機を理解したい」。それが執筆の原動力だ。シリーズは毎回、事件の発生により捜査が進んでいく「現在」と、因縁となった「過去」が並行して語られる。二つの別々の話が、終盤に猛スピードで結び付く。
 日本での新刊『霊の棲む島』も二つの話が同時進行。「女性への暴力」が両者を結びつける。読んだ後、事件の動機となった切実な背景が腑(ふ)に落ちる。
 弱者に対する暴力への怒りが根底にある。ただ、「人は邪悪には生まれない。成長過程で、良いことに触れる機会がなかったんだと思う」。社会や人間への深い洞察力が、ミステリーを超えた作品を生み出す。
 とはいえ、深刻なだけでは息が詰まる。そこを救うのが、「自分自身の体験をたくさん投影した」という日常生活の細やかな描写だ。泣きわめくわが子にウンザリし、結婚式の衣装が入らないほど太った自分に絶望して涙と鼻水が止まらない。あるときは立派で、あるときはみっともない。等身大の登場人物が、いとおしく感じられる。
 北欧では政治や行政、企業のトップに立つ女性が日本とは桁違いに多いが、それでも差別はある。「作家と同時に、女性を勇気づけるモデルになりたい。日本の女性にも伝えたい。石頭の旧世代はそのうちいなくなるわよ、って」
 富山クラーソン陽子訳。集英社文庫・一一八八円。 (出田阿生)
    −−「【書く人】女性を勇気づけたい 『霊の棲む島』 作家 カミラ・レックバリさん(40)」、『東京新聞』2015年01月18日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2015011802000168.html










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