覚え書:「ひと:ヨハン・ガルトゥングさん=「平和の傘」を訴える平和学のパイオニア」、『毎日新聞』2015年08月28日(金)付。

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ひと:ヨハン・ガルトゥングさん=「平和の傘」を訴える平和学のパイオニア
毎日新聞 2015年08月28日 東京朝刊


 ◇ヨハン・ガルトゥング(Johan Galtung)さん(84)

 貧困や差別を「構造的暴力」ととらえ、その著書で、構造的暴力のない状態を「積極的平和」と定義した。戦争やテロといった直接的な暴力がなくても、構造的暴力があれば「消極的平和」にすぎないという概念だ。

 安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」については「憲法9条を台無しにし、全く平和的でない」と批判し、「集団的自衛権を行使すれば、報復が予想され、日本を不安定化させる」と懸念する。

 平和学のパイオニアとして歩み続ける。ノルウェーオスロ大で数学と社会学の博士号を取得、20代で米コロンビア大の社会学助教授に。教授職を断り、オスロ国際平和研究所を設立した。

 オスロ大で世界初の平和学教授となったが「教授はあまり長居すべきでない」と8年で辞職。世界中の大学で教べんを執ってきた。他方で、紛争地の仲裁・調停に当たってきた実務家でもある。基となる理論は、対立する当事者の妥協点を探るのではなく、対立を飛び越えて新たな解決法を見いだす「超越法」だ。そこには数学で身につけた論理的な思考とひらめきが生かされている。

 「『核の傘』ではなく『平和の傘』を」と訴え、日本の国際貢献は「まず隣国から」と、共同管理によるロシアや中国、韓国との領土・領有権問題の解決を提言する。

 「2020年ごろまでに、東アジアにより強い協力関係が育まれているだろう」。日本への期待を込めて予言する。<文・石塚淳子 写真・小川昌宏>

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 ■人物略歴

 妻の西村文子さんとスペイン在住。邦訳著書に「構造的暴力と平和」など多数。国際平和映像祭の招きで来日。
    −−「ひと:ヨハン・ガルトゥングさん=「平和の傘」を訴える平和学のパイオニア」、『毎日新聞』2015年08月28日(金)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150828ddm008070140000c.html





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