覚え書:「オーサー・ビジット作家が教室へ リアルな恋愛観、深めあう 教育評論家・尾木直樹さん@宇部市立黒石中(山口)」、『朝日新聞』 2018年02月26日(月)付。

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オーサー・ビジット作家が教室へ リアルな恋愛観、深めあう 教育評論家・尾木直樹さん@宇部市立黒石中(山口)

オーサー・ビジット作家が教室へ
リアルな恋愛観、深めあう 教育評論家・尾木直樹さん@宇部市立黒石中(山口)
2018年02月26日

 「告白するのが怖いです」「愛は愛でも同性愛が分からない」「それ以前に恋愛に興味がありません」
 尾木ママさん教えて!「愛」って何ですか?
 「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さんに、大胆な質問をぶつけてきたのは同校の生徒会。体育館に集まった全校生徒を前に尾木ママトークが炸裂(さくれつ)した。
 「中学生に直接、性や愛のお話をするのは初めて●(●はハート) 皆さん、意識が高くてビックリよ!」
 というのも尾木さんはビジットに先駆け、恋愛に関するアンケートを実施。問いの一つに、「LGBTQ(Qは性自認性的指向が定まっていない「クエスチョニング」の意)といった、『いろんな性』について聞いたことがあるか」をあげていた。
 「『ある』と答えた人が40%いたの。中学生では多いほうよ、感心だワ!」
 性的指向性自認に悩む生徒への対応については、文部科学省も2016年に指針を示している。そこに尾木ママが切り込んだ。
 そもそも誰かを好きになる、いわゆる「恋」とは何なのか。この問いには「勝手になってしまう、落ちるもの」「ときめいたり、つらかったりすること」など、尾木さんがみんなの回答を読み上げるたび「わかる!」。共感の嵐が。
 さらに生徒の間に入り、「恋愛に興味がない」という声にも耳を傾ける。「女子は怖い」「男子はめんどくさい」など理由を聞くと、「脳科学者の茂木健一郎さんの説だけど」と断り解説。脳には性差があり、女子の多くに共感を得る手段として言語能力を高める傾向が見られるとか。「私は男なのにガールズトークが得意になっちゃった。脳の中は女なのかしら?!」
 「こういう新種の両性類もいるのよ〜!」と笑わせながらも、性の別なく互いの違いを受け入れることが大切だと説く。
 10代の恋愛観を正面から受け止めた尾木さん。「愛とは?」の回答で最も多かった「相手を大切に思うこと」を見ると、答えは既に出ていたのかもしれない。
 (安里麻理子)

 <授業を終えて>
 磯部衣吹(いぶき)さん(3年)「今日みたいに突っ込んだ恋愛話は学校ではしづらかったので、よかったです」
 吉岡翔大(しょうだい)さん(3年)「LGBTQを理解する糸口がつかめた気がします。結局、愛に性別や対象は関係ないんじゃないかと」
     ◇
 尾木さん「リアルな人間関係をいとう子が多い今の時代に、自分たちなりに愛を育もうとしている、けなげな姿が垣間見えてうれしかったワ」

 ●山口県宇部市、全校358人、鶴永幸彦校長。担当は白石知美先生(昨年9月開催)。

 ◆尾木直樹さんの本
 ★『教育とは何? 日本のエリートはニセモノか』 茂木健一郎との共著 中公新書ラクレ・842円
 ★『取り残される日本の教育』 講談社+α新書・907円
 ★『尾木ママの女の子相談室1・2』 ポプラポケット文庫・各702円
 ★『いじめ問題をどう克服するか』 岩波新書・842円
 ★『尾木ママの「思春期の子どもと向き合う」すごいコツ』 講談社文庫・648円

■ベルマーク版オーサー・ビジット
 本の作者が学校の教室を訪れて特別授業をする読書推進事業「オーサー・ビジット」(朝日新聞社主催、出版文化産業振興財団協力)。物語作りに挑戦したり、国際政治について考えたりしました。学校全体でも授業を受けられる「ベルマーク版オーサー・ビジット」(ベルマーク教育助成財団共催、日教販協力)でも、歓声が体育館や校舎に響きました。
    −−「オーサー・ビジット作家が教室へ リアルな恋愛観、深めあう 教育評論家・尾木直樹さん@宇部市立黒石中(山口)」、『朝日新聞』 2018年02月26日(月)付。

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