日記:自由とは単にしてよいこと、してわるいことの問題ではない
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人間が高貴で美しい観照の対象となるのは、彼自身のうちにある個性的なものをすべて磨りへらして画一的なものにしてしまうことによってではなくて、他人の権利と利益とによって課された限界の範囲内で、個性的なものを開発し喚起することによるのである。そして、およそ人間の事業はそれを行う人々の性格を分けもつものであるから、右と同じ過程を経て、人間の生活もまた、豊富で多彩で正気溌剌としたものとなり、高い思想と崇高な感情とに対してより豊かな栄養を与えるものとなり、さらに、民族を、限りなく所属するに値するものとすることによって、すべての個人を民族に結びつけるところの紐帯を一層強固なものとするのである。各人の個性の成長するに比例して、彼は彼自身にとって一層価値あるものとなり、したがってまた他人にとっても一層価値あるものとなりうるのである。
−−J.S.ミル(塩尻公明、木村健康訳)『自由論』岩波文庫、1971年、177頁。
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