日記:つぎのうち、れいぎ正しいあいさつはどのあいさつでしょうか。
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「道徳の教科化」の実現
「道徳の時間」は「教科」ではない「領域」とし、道徳教育は学校教育全体で行うという基本的枠組みは、1958年以降一貫して維持されていたが、2000年森内閣の頃からその枠組みを崩す「道徳の教科化」の動きが顕在化し、ついに第二次安倍内閣で実現した。
2013年2月教育再生実行会議は第一次提言で、「道徳を新たな枠組みによって教科化する」ことを提言。文科省は同年3月から12月まで「道徳教育の充実に関する懇談会」で検討し、2014年2月中央教育審議会に諮問、同年10月「道徳に関わる教育課程の改善等について」の答申(以下「中教審答申」という)を得て、2015年3月に学習指導要領を改訂。道徳を「特別の教科」と位置付けて「道徳科」と呼ぶことにした。2018年度から小学校で、2019年度から中学校で実施される。
教材については、2002年に文科省が「心のノート」を作成し全国に配布。さらに2014年には、「心のノート」を全面改訂して読み物資料を加えた「私たちの道徳」を作成し全国に配布した。これは、既に一種の国定道徳教科書だと言ってよい。
道徳科の導入に伴う教科書については、2016年度に小学校分の検定が行われ、それを使う授業が2018年4月から実施されることになっている。これら民間発行の検定教科書の多くが、「私たちの道徳」にならった素材や構成を採用している。
ただし、教育出版の教科書の異様さだけは群を抜いている。例えば1年生用の「小学どうとく」には次のような記述がある。
つぎのうち、れいぎ正しいあいさつはどのあいさつでしょうか。
1「おはようございます。」といいながらおじぎをする。
2「おはようございます。」といったあとでおじぎをする。
3おじぎのあと「おはようございます。」という。
正解は2だというのだが、いったい誰がどこで決めたのだろう。このような記述は「正しい」ことを一方的に教え込む「教化」であり、悪しき正解主義の中でも最悪の部類に属するものだ。
−−前川喜平「道徳教育 −−『道徳の教科化』がはらむ問題と可能性」、木村草太編『子どもの人権をまもるために』晶文社、2018年、185−186頁。
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