矛盾をおかす力





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 矛盾をおかす力。−−矛盾に堪え得る、ということが、文化の高さの徴候であるとは、現在では誰でもが知っている。のみならず若干の人たちは、高級な人間が今まで気づかなかった自分の不正について暗示を得るため自分自身に対する矛盾を願いもし喚び起こしもする、ということを知っている。しかし、矛盾をおかす力、すなわち、習慣となったもの・伝統ということを、知っている。しかし、矛盾をおかす力、すなわち、習慣となったもの・伝統となったもの・聖化されたものと戦うことによって獲得する疚しさ知らぬ良心−−これこそは、前二者にもましてすぐれたものであり、われわれの文化のもつ真に偉大なるもの新しいもの驚くべきものであり、解放された精神の歩みのなかの決定的な一歩である、−−これを知るものは誰か。
    −−ニーチェ(信太正三訳)『悦ばしき知識 ニーチェ全集8』ちくま学芸文庫、1993年、313頁。

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⇒ ココログ版 【覚え書】矛盾をおかす力: Essais d'herméneutique



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