2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

支配する者は「上司」ではなく、個人的首長であり、その行政幹部は、本質上「官僚」ではなくて、個人的な「臣僚」である。

- 第三章 伝統的支配 〔6〕 伝統的支配 支配の正当性が、古くより伝承されてきた(「以前から存する」)秩序や首長権力の神聖、という基礎に立脚しかつ信じられるとき、その支配を伝統的〔支配〕とよぶことにしておく。首長(または比較的多数の首長)は、…

覚え書:「学校と私:後に大統領になる州知事と18歳で議論=ハーバード大教授、マイケル・サンデルさん」、『毎日新聞』2012年06月25日(月)付。

- 学校と私:後に大統領になる州知事と18歳で議論=ハーバード大教授、マイケル・サンデルさん 私は子供のころから人と議論するのが好きでした。ロサンゼルスの公立高校で生徒会長をしていた時には、当時カリフォルニア州知事で、後に大統領になるロナルド…

書評:セバスチャン・ロファ(原正人、古永真一、中島万紀子訳『アニメとプロパガンダ 第二次大戦期の映画と政治』法政大学出版局、2011年。

戦争の歴史とその発展を重ね合わせてきたアニメの歩み−−大戦時各国の作品を比較検証セバスチャン・ロファ(原正人、古永真一、中島万紀子訳『アニメとプロパガンダ 第二次大戦期の映画と政治』法政大学出版局、2011年。 「政治の指導者たちがイメージの力に…

覚え書:「今週の本棚:『幕末明治見世物事典』=倉田喜弘・編」、『毎日新聞』2012年06月24日(日)付。

- 明治5年春、英国人のジャーナリストが神田橋周辺でむしろ掛けの小屋に入ると、おぞましく不愉快きわまりない光景を目にした。少年が兎の死骸を食いちぎっていたのだ。「驚クベキ倫理を乱セシ野蛮ノ風習アリ」という記事が書かれた。国辱となじられたのだ…

「学問とは何ですか」「それは知る喜びである」

- 学問そのものへの問いのなかで、とりわけ矢面に立たされた教科が一般教育でありました。教養を重視した新制大学の理念として各大学に設置された一般教養でしたが、高校の科目の単なる延長とみられたり、専門科目との関係づけの不十分さが表面化しました。 …

覚え書:「今週の本棚:荒川洋治・評 『螺法四千年記』=日和聡子・著」、『毎日新聞』2012年06月24日(日)付。

- 今週の本棚:荒川洋治・評 『螺法四千年記』=日和聡子・著 ◇『螺法(らほう)四千年記』(幻戯書房・2415円) ◇生き物たちが輝く「異風」の文学 ことばも構成も、他で見かけることのない、異風の書き下ろし小説である。「渚(なぎさ)」「宝船」「笠貝…

書評:苅部直『丸山眞男 リベラリストの肖像』岩波新書、2006年。

手軽とはいえ、孫弟子の手による本格的な丸山眞男の評伝。生活史から丸山思想の背景をさぐる。苅部直『丸山眞男 リベラリストの肖像』岩波新書、2006年。 - いったいいつから、批判するとかのりこえるとか、精神を継承するとかしないとか、剣呑な言葉でしか…

覚え書:「今週の本棚:川本三郎・評 『ひさし伝』=笹沢信・著」、『毎日新聞』2012年06月24日(日)付。

- 今週の本棚:川本三郎・評 『ひさし伝』=笹沢信・著 毎日新聞 2012年06月24日 東京朝刊 (新潮社・3150円) ◇生きる者を励まし続けた作家の思い 悲劇がしばしば死を賛美するのに対し、喜劇は生を称揚する。どんなにぶざまで弱くて愚かでも人間が生きる…

中心者に指示を待つのではなく「それぞれの立場で、こうやったほうがいい、いやこういうふうにやったほうがもう少しいいというようなやりかたというか」……

- 井上 ぼくがいちばん小さいときを思い出して、人間ていうのはこうやって生きていくのかなと思ったのは、雪国で育ったわけで、雪がたくさん降りますけれど、とりわけたくさん降る年があったんですね。それで、戦争中ですから、おやじさんとか兄さんとかです…

書評:荻野富士夫『特高警察』岩波新書、2012年。

- 『特高警察』が新たな取締り対象を求めて自己増殖化していくこと、ひとたび制定された治安維持法がその使い手である取締り当局の恣意的運用にまかされていくことを、大きな犠牲の代償として学んだ。ゲシュタポの「非社会的分子」の強制排除やスターリン粛…

覚え書:「目撃者=三留理男著」、『毎日新聞』2012年6月24日(日)付。

- 目撃者=三留理男著 (毎日新聞社・3990円) 20世紀後半、報道写真家として時代の最前線に立ち続けた三留理男。第1回土門拳賞受賞者でもある著者の、膨大な枚数の写真とインタビューでつづられた回顧録である。 60年安保や三里塚など国内での取材はもちろ…

明るかったですね。とにかく天下国家の仕事をしているんですから

- 取締りをすることの自負 一九三〇(昭和五年)九月の大阪府特高課『特高時報』に寄稿した小橋正男は、社会主義の取締りについて「正面から議論で行くことは禁物で」、「搦手から彼らの揚足を取るに限る」と指導を受けてきたことに疑問や不満をもっていた。…

覚え書:「時流底流 著作権と私的利用」、『毎日新聞』2012年6月23日(土)付。

- 時流底流 著作権と私的利用 違法ダウンロード罰則化を含む改正著作権法が、今国会で成立した。インターネット上のファイルのダウンロードという故意性の判断が難しい行為に「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」を課すことの是非だけでなく、法案…

書評:渡邊一民『武田泰淳と竹内好−−近代日本にとっての中国』みすず書房、2010年。

渡邊一民『武田泰淳と竹内好−−近代日本にとっての中国』みすず書房、2010年。 渡邊一民『武田泰淳と竹内好 近代日本にとっての中国』みすず書房、読了。両者は戦前から中国を通して日本を、日本を通して中国…即ち生身のアジアの問題…と格闘した一筋縄ではい…

覚え書:「みんなの広場 芸人の名前公表も問題だ」、『毎日新聞』2012年6月21日(木)付。

- みんなの広場 芸人の名前公表も問題だ 会社員 47(長崎市) 人気お笑い芸人の母親の生活保護受給を巡り、親族の扶養義務が議論されました。生活保護は本人の能力や資産に加え、民法で扶養義務ありと定める祖父母や父母、子や孫、兄弟姉妹らに意思確認にし…

9歳になる君へ:あんたから見てわしがキリスト教徒なら、あんたもわしから見ればユダヤ教徒と申せますからな、宗旨は違っても人情は一つなのです。

- 修士 ああ、ナータンさん! 貴方がキリスト教徒だ! いや、本当のキリスト教徒だ! 第一等のキリスト教徒ですよ! ナータン 結構な話です! あんたから見てわしがキリスト教徒なら、あんたもわしから見ればユダヤ教徒と申せますからな、宗旨は違っても人情…

覚え書:「異論反論 生活保護バッシングがやみません 寄稿=雨宮処凛」、『毎日新聞』2012年6月20日(水)付。

- 異論反論 生活保護バッシングがやみません 寄稿=雨宮処凛貧困拡大の責任は誰に 7日、ある記者会見が開催された。 芸能人の母親が生活保護を受けていたことが世間を騒がせているが、専門家達が冷静な報道と議論を求めて開催したのだ。こうした会見を行わ…

「95年、東京の地下鉄でサリンガスによって市民を虐殺するテロ事件がありました。この犯人は以下のA〜Eのどれか。1つ選択して選べ」みたいな「歴史」化が進むことへの恐怖といらだち

- 歴史は暗記? −−でも、歴史が得意だからといって特別いいわけでもないしな……。あと、確かに暗記科目っていうイメージはある。 そうです、学科目としての歴史は、かわいそうなのです。高等学校までの歴史が「暗記もの」のように思われてしまう理由は、試験…

覚え書:「今週の本棚・本と人:『「デモ」とは何か』 著者・五野井郁夫さん」、『毎日新聞』2012年06月17日(日)付。

- 今週の本棚・本と人:『「デモ」とは何か』 著者・五野井郁夫さん (NHKブックス・998円) ◇「路上の政治」の可能性を探る−−五野井郁夫(ごのい・いくお)さん 1979年生まれの気鋭の政治学者。単独では初の著書は、福島第1原発事故の後、日本で…

「総体的」態度が必要になるのは、生活における互いに衝突するさまざまの関心を行動において統合することが必要であるから

- 哲学を思考と関係づけることは、哲学を知識から区別するのに役立つ。知識、根拠づけられた知識は科学である。それは、合理的に解決され、整理され、処理された事物を表示する。他方、思考は未来に関連している。それは不安定状態によって引き起こされ、動…

覚え書:「今週の本棚:沼野充義・評 『おろか者たち−−中学生までに読んでおきたい哲学(4)』=松田哲夫・編」、『毎日新聞』2012年06月17日(日)付。

- 今週の本棚:沼野充義・評 『おろか者たち−−中学生までに読んでおきたい哲学(4)』=松田哲夫・編 (あすなろ書房・1890円) ◇大人になってかみしめる本当の意味 とてもよいアンソロジーのシリーズが刊行され始めた。全八巻、題して「中学生までに読…

書評:デイヴィッド・ライアン(田島泰彦、小笠原みどり訳)『監視スタディーズ――「見ること」「見られること」の社会理論』岩波書店、2011年。

「監視」へ自ら「参加」していく現代の監視社会デイヴィッド・ライアン(田島泰彦、小笠原みどり訳)『監視スタディーズ――「見ること」「見られること」の社会理論』岩波書店、2011年。地下鉄サリン事件の容疑者の逮捕に監視カメラの映像が一躍かったことを…

覚え書:「今週の本棚:日本をめざしたベトナムの英雄と皇子=著・白石昌也」、『毎日新聞』2012年6月17日(日)付。

- 今週の本棚:日本をめざしたベトナムの英雄と皇子=著・白石昌也 (彩流社・1890円)ファン・ボイ・チャウやクオン・デと言われても、日本ではあまり馴染みがないだろう。100年ほど前、宗主国フランスからの独立を期したベトナムの2人の闘士の名だ…

書評:藤原聖子『教科書の中の宗教 −−この奇妙な実態』岩波新書、2011年。

「教科書が、意図的ではなく結果的に、特定の宗教的信仰を受け入れさせようとしてしまっている」、「教科書がある宗教を他の宗教より優れているとしたり、逆に宗教にある宗教に対して差別的な偏見を示している」問題について藤原聖子『教科書の中の宗教 −−こ…

覚え書:「みんなの広場 役割大きくなる『臨床僧』」、『毎日新聞』2012年6月16日(土)付。

- みんなの広場 役割大きくなる「臨床僧」 主婦 80(大阪府守口市) 5月初旬、2歳下の弟が長い闘病生活の末、旅立ちました。本人は病気のことをすべて知っており、自分なりに覚悟はしていた様子でしたが、時折姉の私にかけてくる電話で正直な気持ちをぶつ…

書評:J.S.ミル(竹内一誠訳)『大学教育について』岩波文庫、2011年。

- 人間が獲得しうる最高の知性は、単に一つの事柄のみを知るということではなくて、一つの事柄あるいは数種の事柄についての詳細な知識を多種の事柄についての一般的知識と結合させるところまで至ります。(中略)広範囲にわたるさまざまな主題についてその…

覚え書:「『ダウンロード罰則』成立へ 衆院通過 簡略審議に批判も」、『毎日新聞』2012年6月16日(土)付。

- 「ダウンロード罰則」成立へ 衆院通過 簡略審議に批判も 音楽や映像を違法に複製した海賊版をインターネットを通じてダウンロードする行為に罰則を科す著作権法の改正案が15日、衆院本会議で可決され、参院に送られた。来週にも成立する。衆院本会議に先立…

書評:リチャード・ホーフスタッター(田村哲夫訳)『アメリカの反知性主義』みすず書房、2003年。

アメリカの「正義」を根柢から支える「知性への敵視」という伝統リチャード・ホーフスタッター(田村哲夫訳)『アメリカの反知性主義』みすず書房、2003年。 本書の主題は、アメリカ合衆国が建国以来、広く社会に浸透している「反知性主義」。まず、建国と密…

書評:田中伸尚『ルポ 良心と義務 −−「日の丸・君が代」に抗う人びと』岩波新書、2012年。

「この歌は由緒正しい日本の国の学校を卒業したんだという歌だから」歌いなさいと「由緒正しい国」は強制するのだろうか。田中伸尚『ルポ 良心と義務 −−「日の丸・君が代」に抗う人びと』岩波新書、2012年。「日の丸・君が代」が国旗・国歌と法制化されて今…

覚え書:「異論反論 玄葉外相が適者生存論を展開しました 『種』の政治思想は危険だ 寄稿=佐藤優」、『毎日新聞』2012年6月13日(水)付。

- 異論反論 玄葉外相が適者生存論を展開しました 「種」の政治思想は危険だ 寄稿=佐藤優 5月28日、玄葉光一郎外相が母校の上智大学で講演を行った。外務省のホームページによると、学生からの「若い人たちにメッセージがございましたら、一言お願いします…