2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧
- 今週の本棚:中村桂子・評 『親切な進化生物学者』=オレン・ハーマン著 (みすず書房・4410円) ◇利他的行動にささげられた「天才」の生涯 五〇〇ページを超える本書を読みながら、書評したいな、いやこんな面倒な本は止めようと揺れ続けていた。結局…
- 自分や人間を超える、より大いなるものを信じればこそ、どんな「不幸」のうちにあっても、なお幸福でありうるでしょうし、また「不幸」の原因と戦う力も出てくるでしょう。もし、その信仰なくして、戦うとすれば、どうしても勝たなければならなくなる。勝…
- 今週の本棚:三浦雅士・評 『世界文明史の試み−神話と舞踊』=山崎正和・著 (中央公論新社・3360円) ◇閉塞する現代への確固たる指針 瞠目すべき書である。世界文明史の構想だが、シュペングラー、トインビー、ベネディクトら、従来の文明有機体論と…
- もし誰かがこれらの怪物たちのことをそのまま信じないで、その一つ一つをもっともらしい理くつに合うように、こじつけようとしたまえ! さぞかしその人は、なにか強引な智慧をふりしぼらなければならないために、たくさんの暇を必要とすることだろう。 だ…
- 新聞に対する税制:欧州各国の現状 言論多様性を重視、「活字」の税率に配慮 野田政権は5%の消費税率を15年10月に10%へ引き上げることを柱とする税と社会保障の一体改革を進めている。税率アップに際し財務省などは「混乱を招く」として、2通り…
- 時流底流 押しつけられる番号と絆 小笠原みどり(ジャーナリスト) 原子力発電所の連続爆発から1年もたたず、放射能被害が進行するなか、この国では大増税に電気料金の値上げと、失敗の責任をとるどころか、後始末をすべて個人に押しつける政治が加速して…
- 私は東北の片田舎の一商賈のせがれである。少年時代の家業は綿屋だが、如何いふ縁故か、父親は新聞雑誌の取次をもやつてゐた。私の記憶は明治十五六年即ち私の五ツ六ツの頃まで遡り得る。此頃新聞雑誌の取次は未だ一個独立の商売とはなり得なかつたらしい…
- 人生に逆境はない。如何なる境遇に在りても、天に事へ人に仕へる機会は潤澤に恵まれている。 大正十三年六月十五日 吉野作造 −−吉野作造「日記 二」、『吉野作造選集 14巻』岩波書店、1996年。 - 明日1月29日は吉野作造(1871−1933)の誕生日。上に引用…
- みんなの広場 原発誘致した人は福島に住んで 主婦 63(福島市) 今どこに行っても「福島です」と言うと皆優しく温かく「頑張って!」と励ましてくださり大変うれしいのですが、私たち福島県人は、どう頑張ればいいのでしょう? 一人一人がどんなに頑張って…
- 引用句辞典 不朽版 お笑い番組 鹿島茂 テレビをつまらなくする 極小タレント共同体 われわれの笑いというものは、常に、ある人間集団の笑いなのである。(中略)笑いには、現実のものであれ、想像されたものであれ、ともに笑う人々のあいだでの了解済みの…
政治の世界では、言葉というものが大きな働きをなす。言葉を用いればこそ、民衆の支持をとりつけことも、その逆も可能になる。世論を誘導するのも言葉の力によるところが大きいのはいうまでもない。デモクラシーの国であれ、独裁者の国であれ、政治過程にお…
- くらしの明日 私の社会保障論 貧困対策、本格始動の年に 湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長日本型福祉社会の見直し 2012年は日本の貧困対策が大きく動く年になるかもしれない。 日本では、貧困の存在は高度経済成長以降、長く忘れ去られてきたが、90…
- 食について 人間は生まれ出た瞬間から、死に向かって歩みはじめる。 死ぬために、生きはじめる。 そして、生きるために食べなくてはならない。 何という矛盾だろう。 これほどの矛盾は、他にあるまい。 つまり、人間という生き物は、矛盾の象徴といってよ…
- 現代の知性人とは如何なるものであるかという問いに対して、「思索人の如く行動し、行動人の如く思索する」というベルグソンの言葉をもって答えることができる(第九回国際哲学会議におけるデカルト記念の会議に寄せた書簡)。ところで思索人の如く行動し…
- 我が宿は 雪降りしきて 道もなし 踏みわけてとふ 人しなければ 読人知らず −−0322「巻六 冬歌」、『古今和歌集』。 - 夕方から降り始めた雨が20時すぎぐらいから、雪に。東京では今期初の本格的な大雪ですね。もちろん、朝になれば、路面が凍結して大変…
- 幸福こそが哲学の目標です。もっと正確に言うなら、哲学の目標とは叡智であり、だからこそ幸福でもあるのです−−なぜなら、繰りかえしになりますが、哲学の歴史を通してみると、そしてとりわけギリシアの伝統のなかでもっとも評価されている見解の一つによ…
- 今週の本棚・本と人:『こども東北学』 著者・山内明美さん (イースト・プレス・1260円) ◇切り刻まれた歴史の先に−−山内明美(やまうち・あけみ)さん 自身の経験を軸に、東北の貧しさと豊かさの歴史を描いた。1976年、宮城県南三陸町生まれの東…
- これが言いたい:「大衆迎合」としたり顔で断罪しても意味がない=北大大学院准教授・吉田徹 ◇ポピュリズム生む背景直視を 「政権交代のある民主主義」が早くも失望に変わった中で、日本政治におけるポピュリズムの台頭を懸念する議論が目立ってきた。 確…
- 異論反論 城戸さん! 女性の貧困が深刻化しています SOSに耳を傾けよう 寄稿=城戸久枝 かつて一億総中流といわれていた日本だが、最近は格差や貧困という文字があちこちで目につくようになった。 女性の貧困は深刻だ。国立社会保障・人口問題研究所の分析…
- すべての知識は、分離、区画、制限によって生ずる。或る全体的なものの絶対的知識などというものは存在しない! −−ニーチェ(渡辺二郎訳)「哲学者の書」、『ニーチェ全集』第3巻、ちくま学芸文庫、1994年、294頁。 - 賞罰告知といいますか、定型文といい…
- リアル30’s:働いてる? (1) 歯車には ならない◇仕事はする。自分のために 「キ・オーラス・サォン?」(何時ですか)。東京・有楽町のブラジルレストラン。都内の大手企業に勤める美晴さん(33)が声を上げる。男女の生徒10人が一斉に時刻を答…
- 世界がどれほどの価値あるものなのかということを、世界の最小の小部分でさえも、顕示してくれるに違いない、−−人間を見よ、そうすれば諸君は、世界についてどう考えるべきであるかを、知るであろう。 −−ニーチェ(渡辺二郎訳)「哲学者の書」、『ニーチェ…
- 今週の本棚:伊東光晴・評 『原子力 その隠蔽された真実』=ステファニー・クック著 (飛鳥新社・2415円) ◇「平和と軍事」論争の秘められた歴史に迫る 何が隠されていたのか。 まず、アメリカの国務長官アチソンと、TVA(テネシー河流域開発公社)…
- 君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をも香かをも 知る人ぞ知る 紀友則 −−0038「巻一 春歌上」、『古今和歌集』 - ちょいと用事があって近所をまわっていたのですが、造園やの植え込みの梅のつぼみが大きくなっておりました。これから一ヵ月、すさまじい寒さ…
- 今週の本棚:養老孟司・評 『カエルの声はなぜ青いのか?』=ジェイミー・ウォード著 (青土社・2310円) ◇共存する感覚から学ぶヒトの不思議 音がすると同時に色を感じる人がいる。これを色聴(しきちょう)という。コオロギの声が赤く、カエルの声が…
- 私が学校教育や読書から得られる知識に重きをおかないのは、やはり同じ理由からです。人々は知識を得るということに、根本的な錯覚をいただいている。人々はなにかを知っているということによって、より高く飛べるようになると思っているようです。いまま…
- 時代の風:原発事故の原因=東京大教授・加藤陽子 ◇欠けていた俯瞰と総合 新聞が好きだ。毎日、朝日、日経の3紙をざっと読み、大事だと思われる記事を切り抜き、3カ月に1回の割合で読み直す。3カ月前には「点」であった記事が、時間による熟成によって…
- 三一〇 善良な人々。−−善良な人々は、その祖先たちが、他所の人の干渉に対して絶え間なのない恐怖を抱いたことを通して、自らの人柄を獲得してきた。ーー祖先たちは穏やかにし、なだめ、謝罪し、身をかがめ、気をそらせ、お世辞をいい、頭を下げ、苦痛や不…
- 語る:ドナルド・キーンさん 著作集全15巻の刊行開始 ◇日本文学の粋、ルビと索引充実 日本文学研究で知られる米コロンビア大名誉教授、ドナルド・キーンさんの著作集(全15巻、新潮社)の刊行が始まった。初めての日本語作品「碧(あお)い眼(め)の…
- 先のタルムード解釈をレヴィナスに促した動機のひとつに「飢え」と「飢饉」があった。いつかテクノロジーはこの課題を解決するだろうとの展望を抱きながらも、レヴィナスは国連などの介入によってもこの課題がまったく解決するされていないことを指摘して…