2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

覚え書:「今週の本棚:藤森照信・評 『ブルーノ・タウト−−日本美を再発見した建築家』=田中辰明・著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:藤森照信・評 『ブルーノ・タウト−−日本美を再発見した建築家』=田中辰明・著 (中公新書・798円) ◇大戦間期のジグザグ人生を追う 帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトについて普通の人から、「日本では有名ですが、世界的には…

「孔子もアリストテレスも、『昔々あるときに』生きていたえらい人というよりは、偉人は偉人でも隣りに住んでいて、垣根の向こうから声をかけてくれる日常生活のつき合い相手」として

- 私の先生で、数年前に故人となった南原繁という学者がいます。南原先生と話をしていて談たまたま『論語』に及ぶと、先生は「あの人はね」云々というのです。「あの人」というのはむろん孔子のことです。けれども「あの人はね」といわれると、何か孔子が同…

覚え書:「今週の本棚:『道具と人類史』=戸沢充則・著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:『道具と人類史』=戸沢充則・著 (新泉社・1680円) 人類の歴史を道具に即してスケッチしたエッセー集。簡潔な記述から現代の病巣が浮かび、骨太の文明論として読み応えがある。考古学者で元明治大学長の著者は今年4月に亡くなった。社会…

「善良であること」「親切であること」を人は笑うでしょうが、

- 自己を気遣うよりさきに他の誰かを気遣うこと、他の誰かを見守ること、自己の責任を引き受けるよりさきに他の誰かの責任を引き受けること、こういうった行いのうちにはたしかに聖性が認められます。人間性とはこの聖性の可能性のことです。この守護のスロ…

覚え書:「橋下・大阪市長 一転 文楽鑑賞 『台本が古すぎる』」、『毎日新聞』2012年7月27日(金)付。

- 橋下・大阪市長 一転 文楽鑑賞 「台本が古すぎる」 文楽協会への補助金凍結を表明している大阪市の橋下徹市長は26日夜、国立文楽劇場(大阪市中央区)で近松門左衛門原作の「曽根崎心中」を鑑賞した。橋下市長は鑑賞後、記者団に「古典として守るべき芸…

書評:V・バナジー、E・デュフロ(山形浩生訳)『貧乏人の経済学』みすず書房、2012年。

- 自分の健康についての正しい決断を責任もって下せるほどに賢く、忍耐強く、知識のある人など、だれもいないということを認識すべきです。豊かな国に住む者は目に見えない後押しに囲まれて生活しています。 −−V・バナジー、E・デュフロ(山形浩生訳)『貧…

聡明さとは、精神が真なるものに対して開かれていることである

- 私たちは道徳によって欺かれてはいないだろうか。それを知ることこそがもっとも重要であることについては、たやすく同意が得られることだろう。 聡明さとは、精神が真なるものに対して開かれていることである。そうであるなら、聡明さは、戦争の可能性が永…

覚え書:「異論反論 官邸前での抗議行動が広がっています 切実な声に耳を傾けよ=雨宮処凛」、『毎日新聞』2012年7月25日(水)付。

- 異論反論 官邸前での抗議行動が広がっています 切実な声に耳を傾けよ 寄稿 雨宮処凛 16日、代々木公園で開催された「さようなら原発10万人集会」に参加した。 猛暑となったこの日、炎天下に集まったのは主催者発表で17万人。福島第1原発事故から1…

知慮(フロネーシス)というものに関して

- 知慮(フロネーシス)というものに関しては、こんなふうにして、つまり、いったいいかなるひとびとをわれわれは「知慮あるひと」と読んでいるかということを考えることによって、その何たるかの把握が可能になるであろう。「知慮あるひと」(フロニモス)…

自分の育てた思想を国家に譲ること

- ジャワについて数日たったある時、私の中に考えが生じた。一年前に自分の中にあった考え(日米どちらの国にも与せず、人を殺さずに自分の生を終えよう)という目標から、すでに自分は外れている。それは、世界史のどの時期にも国家をつくったところに生じ…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『臨床哲学講義』=木村敏・著」 、『毎日新聞』2012年07月22日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『臨床哲学講義』=木村敏・著 (創元社・2625円) ◇哲学的視点で捉える精神医学の現場 アメリカはいざ知らず、ヨーロッパでは、哲学、のみならず、学問の世界で一般に、古典語としてのギリシャ語とラテン語、そしてヨーロ…

書評:マッツィーニ(齋藤ゆかり訳)『人間の義務について』岩波文庫、2010年。

イタリア建国の志士による思想書。自身で勝ち取る祖国解放の概念は、現在のナショナリズムとは対極的。相互尊重と、諸国民の特性の発揮は人類に利益をもたらさんとする力強い意志を説く。国民国家破綻の現在だから一読の価値があります。ロマン主義的情熱と…

パンとサーカス。ショータイムがナショナル・アイデンティティーへと収斂されていく。うぇ〜ィ!

※twitterの雑感のまとめ。あ、そろそろオリンピックーー。たぶん、ぜったいみないと思うが・・・。パンとサーカス。ショータイムがナショナル・アイデンティティーへと収斂されていく。うぇ〜ィ!加えて、集団熱狂というにゅーるんべるく。スポーツの場合、…

覚え書:「今週の本棚:山崎正和・評 『西洋哲学史 1−4』=神崎繁・熊野純彦・鈴木泉、責任編集」、『毎日新聞』2012年07月22日(日)付。

- 今週の本棚:山崎正和・評 『西洋哲学史 1−4』=神崎繁・熊野純彦・鈴木泉、責任編集 (講談社選書メチエ・1890〜1995円) ◇世界文明を生んだ「奇妙な精神」の歴史 哲学への無関心が今、とりわけ日本の言論界に瀰漫(びまん)している。学界を超…

「ディア・フレンド」という人間感覚

- 人間関係の新しい型 鶴見 万次郎の問題はそれなんです。万次郎が日本にもって帰りたかったのは物ではなく、人間関係の新しい型ということだった。自分を助けてくれた船長に「ディア・フレンド」と呼びかけているように、身分のない人を助けられる人間が上…

覚え書:「今週の本棚:鹿島茂・評 『失脚/巫女の死−デュレンマット傑作選』=デュレンマット著」、『毎日新聞』2012年07月22日(日)付。

- 今週の本棚:鹿島茂・評 『失脚/巫女の死−デュレンマット傑作選』=デュレンマット著 ◇『失脚/巫女(みこ)の死−デュレンマット傑作選』(光文社古典新訳文庫・1100円) ◇同時代の「なにか」を連想させる現代の寓話 一九七〇年頃、テレビの深夜放送で…

旨いもの・酒巡礼記:東京都・新宿区編「ぎたろう軍鶏炭火焼鳥 こけこっこ」

- すべて賞讃すべきものは、それが何らかの性質をもち、何ものかへの関係において、或る仕方においておあるものなるによって賞讃されるのであると見られる。たとえば、われわれが正しいひとや、勇敢なひとや、総じて善きひとを賞讃し彼らの卓越性(アレテー…

みずから心を正しくしてこれらの害悪を対治する工夫を怠ることのないように

- 人類の上に重くのしかかって、改善の見込みのない(ように思われる)もろもろの害悪をつらつら思いみるとき、思慮ある人は、道義の穎廃ををすら招き兼ねないような苦悩を感じる、しかも無思慮な人は、これを夢にだに知らないのである。その苦悩とは−−世界…

覚え書:「今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著」、『毎日新聞』2012年7月22日(日)付。

- 今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著 (晶文社・1995円) この六月に死去したSFの詩人への最後のインタビュー。日本でも愛されている『火星年代記』『たんぽぽのお酒』など自作のことから、子供時代の思いでま…

書評:田中辰明『ブルーノ・タウト  日本美を再発見した建築家』中公新書、2012年。

田中辰明『ブルーノ・タウト 日本美を再発見した建築家』中公新書、2012年。 ナチの迫害を避けて来日し、日本の美を「再発見」し、その後、トルコへ渡る−−政治に翻弄されつつも常に前進する「色彩の建築家」ブルーノ・タウトの初の本格的評伝が本書である。…

書評:阿部彩『弱者の居場所がない社会−−貧困・格差と社会的包摂』講談社現代新書、2011年。

- 現代社会において経済的地位は、社会的地位を意味し、社会の中で低い順位に常に置かれていることは、精神的に大きな苦痛である。それは、人として敬われないこと、自尊心を失うこと、希望がないこと、につながる。そして、経済的貧困は、究極的には、人び…

朝のこの上なく明るい眼差しで、輝いている優しい若者よ

- 朝のこの上なく明るい眼差しで、輝いている優しい若者よそのためにこそ出発せよ若者たちよあなたたちの年齢にふさわしい情熱を燃やして出発せよ強く雄々しくこんなにも美しい戦いのために。二つの偉大な美徳、『忍耐』と『勇気』とによって、 すべてのもの…

書評:計見一雄『戦争する脳 破局への病理』平凡社新書、2007年。

計見一雄『戦争する脳 破局への病理』平凡社新書、読了。精神科医の目から見た精神医学的戦争論。精神を病む兵士から戦争遂行の閣僚の心理行動に至るまで、脳の仕組みからそのメカニズムを分析する。戦場の兵士だけでなく、大本営の指導者からブッシュ政権の…

覚え書:「今週の本棚:湯川豊・評 『古代ローマとの対話』=本村凌二・著」、『毎日新聞』2012年07月15日(日)付。

- 今週の本棚:湯川豊・評 『古代ローマとの対話』=本村凌二・著 (岩波現代文庫・1008円) ◇「歴史感」の発想が飛翔するとき 「歴史感」という言葉が提示される。観、ではなく、感、である。この本の副題ともなっているこの言葉は、序章でその意味がお…

知恵を愛し、知恵の命ずるところによって生きること

- 南方は、鴨長明を「十二世紀の日本のソロー」と呼んだ。わたしは南方熊楠を、二十世紀の日本のソロー(Henry David Thoreau, 1817−1862)とよびたい。ソローは、わたしがもっとも尊敬する十九世紀アメリカの思想家である。知識の量においては、南方はソロー…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 『プロメテウスの火』=朝永振一郎・著、江沢洋・編」、『毎日新聞』2012年07月15日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『プロメテウスの火』=朝永振一郎・著、江沢洋・編 毎日新聞 2012年07月15日 東京朝刊 (みすず書房・3150円) ◇政治と科学、「不信」が開いた「人災」への道 福島原発事故の国会調査委員会報告が出た。事故の根源的原因は、…

「神父様、あっしには、これがありまさあ。だから、大丈夫で……」

- ルターの住んでいたドイツのザクセン近郊でも、免罪符は大々的に販売されていた。 ちょうどその折りの話である。町の司祭、大学教授として赴任していたルターは、日中、街の路上でひとりの酔っぱらいを見かけた。かなり酔って、道端に横たわっている。その…

覚え書:「今週の本棚:中村達也・評 『暮らしの質を測る』=J・E・スティグリッツ、A・センほか著」、『毎日新聞』2012年07月15日(日)付。

- 今週の本棚:中村達也・評 『暮らしの質を測る』=J・E・スティグリッツ、A・センほか著 (金融財政事情研究会・1890円) ◇GDPを超える「豊かさの指標」を求めた挑戦 自動車を運転する場面を考えてみよう。速度メーターがあり、ガソリン残量メー…

人間はいつの時代からか、「性」には羞恥を感ずるが、「殺人」には羞恥を感じないような精神構造を持つようになったようだ

- 小説や新聞、雑誌においては、刑法上極刑である殺人行為を扱っても犯罪とはならずに、犯罪行為でない「性」を扱ったものは犯罪となる、という奇妙な錯綜が常識として痛痒している。芸術や研究の対象としての殺人は容認されるが、「性」は否定される。これ…

覚え書:「今週の本棚:三浦雅士・評 『荒凡夫 一茶』=金子兜太・著」、『毎日新聞』2012年07月15日(日)付。

- 今週の本棚:三浦雅士・評 『荒凡夫 一茶』=金子兜太・著 (白水社・2100円) ◇生涯、若々しく色っぽく過ごす秘訣を伝授 俳人・金子兜太。大正八年(一九一九年)生まれ。九十二歳だが、躍動する文章は若々しく色っぽい。それもそのはず、小林一茶の人…