教育の力にもおのずから限りがある






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 世には教育万能者があって、何か社会におもしろくない事が起こると、すぐに教育者を責めるけれども、教育の力にもおのずから限りがある。
    −−河上肇『貧乏物語』岩波文庫、1965年、44頁。

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確かに、殆どの問題のたいていの原因は教育に起因する。
だから、「教育を変革しなければならない」「人間教育を今こそ」なんて脊髄反射が出てしまうことはよくわかります。

確かに、原因は教育に起因するんですけどね。
しかし、教育を変革するだけで良くなるわけでもありませんし、教育……特に「公教育」……に関しては守備範囲的にもおのずから限界があるんです。

この事実を見ないで、「教育を変えなければならない」から「教育を変革すればすべての問題が片づく」という短絡的思考は、結局のところ何を変革することも多分できない。

なにしろ、それは自己変革とはほど遠い他者依存の感情に依拠するからだ。

もちろん、制度的に変革することも、そして現況を冷静に分析し善処していくことは必要不可欠です。しかし、それで「解決する」と発想するのは大きな間違いなんじゃないか……そんなことをここ数年実感しております。

くどいですが、その変革への労苦を批判しようというわけではありません。
しかし、批判してものごとを丸投げして、そして同時に批判することで自分自身を安全地帯に定位するようでは、何をやってもかわらないどこから、却って悪くなっちまう。

ただ、それだけの噺ですよ。

しかし、河上肇(1879−1946)も読まれなくなって久しいですなぁ〜。






⇒ ココログ版 教育の力にもおのずから限りがある: Essais d'herméneutique



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