日記

日記:ジョン・ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫

「人間が自分自身を導くにあたって最終的に頼ることができるのは、自分の知性です」。ジョン・ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫。人間の自由と自主独立を徹底的に考察し、その論理的導き方を説いたジョン・ロック晩年の名著。本書は…

日記:マイケル・ボーンスタイン&デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート(森内薫訳)『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』(NHK出版)

マイケル・ボーンスタイン&デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート(森内薫訳)『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』(NHK出版)戦慄を覚えつつ読了する。ほとんど即座に殺された幼子がなぜ生き残ることができのたのか。本書はその筋道…

日記:武田清子『わたしたちと世界』(岩波ジュニア新書)が提示した課題。

尊敬する武田清子先生が今年4月に天に召された。数々の学術的著作に蒙を啓かれたことは言うまでもありません。武田先生が1983年に編んだ中高生向けのメッセージともいうべき『わたしたちと世界』(岩波ジュニア新書)紐解きながら、「これからは、世界…

日記:松本清張『砂の器』を読む/「人間への関心」とは至極、現代的課題である。

知人の勧めで松本清張『砂の器』を読む。清張の作品はノンフィクションしか読んだことがなく、小説は初めてだが、一気に読み終えた。ネタバレを慎み筋は横に置くが、読書の楽しみとは、知識を得たり蒙を啓くことだけにあるのではなく、読むこと自体の楽しみ…

日記:honorよりもdignityを

人間が誇りをもって生きるということを表現するには、honorではなくてdignityを宛てるべきなのではないかと反省している。honorには上下関係のなかで定位という意味が色濃くあって、そうではない人間の尊厳を考えていかなければならないからね。前者は唾棄さ…

日記:森本あんり『異端の時代――正統のかたちを求めて』岩波新書、発売。

今月21日刊行の新書『異端の時代――正統のかたちを求めて』の見本を、ICUの森本あんり先生にお届けしてきました。この機会にお薦めの本、また『異端の時代』の読み方(何章から読むのがお薦めか?)もうかがいました。近日「B面の岩波新書」にUP予定です。 pi…

日記:未来へ、或いは過去へ、思考が自由な時代、人が個人個人異なりながら孤独ではない時代へ―

「真実が存在し、なされたことがなされなかったことに改変できない時代へ向けて」。言葉の意味がすり替えられ、あったことがなかったことにされる現代こそ、ジョージ・オーウェル(高橋和久訳)『一九八四年』(早川書房)読まずに何ができようか。こんなSF…

書評:ジーン・シャープ(瀧口範子訳)『独裁体制から民主主義へ 権力に対抗するための教科書』(ちくま学芸文庫)。

ジーン・シャープ(瀧口範子訳)『独裁体制から民主主義へ 権力に対抗するための教科書』(ちくま学芸文庫)紐解く。なぜ非暴力不服従が有効なのか? 答えは簡単だ。独裁者は統治する民衆の支えを必要とするからだ。歴史的変革を事例に198の方法を提案す…

日記:ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの初期短編集『旅のスケッチ』(筑摩書房)

- カプリとアナカプリから半々の地点で、ふたりは出逢った。彼女はしばしば呆然と辻馬車に坐っていたが、つぎの瞬間、走りでて、彼の腕に飛びこみ、幸福にうち震えながら声をあげて泣いた。説明も質問も必要なかった。 ただ、グレンロス氏は「どう?」といっ…

日記:文明の歴史は犠牲の内面化の歴史である

- 人間が自分自身を自然としてもはや意識しなくなる瞬間に、人間がそのために生きて行くすべての目的、社会の進歩、あらゆる物質的・精神的力の向上、さらには意識そのものさえ、すべては価値を失ってしまう。そして、手段を目的化して王座に即(つ)かせる…

日記:浮くものが好き=谷川俊太郎

- ふんわり浮くもの谷川 ラジオは、だいぶあとですね。戦争ですったもんだで……。なんだろうねえ。やっぱり、小学生のころは、模型飛行機でしょうね(引用者注…好奇心の対象について)。 工藤 その話、ちゃんと聞いたことがない。なぜ好きになったのですか? …

日記:ロックのフィルマー批判

ジョン・ロック(加藤節訳)『完訳 統治二論』(岩波文庫)。膨大な第一部はフィルマーの王権神授説批判。「いかなる人間も自由に生まれついていない」というフィルマーの神学は、人間の自由や幸福の追求を保証する神への冒涜に他ならない。近代民主主義基礎…

日記:物事をより多面的・長期的に理解するための弁証法

- 少し大げさな言い方になりますが、西欧では古代ギリシア以来、二つの対立する立場に分かれて問答しながら、お互いに相手の議論の曖昧なところ、捻れているところを指摘し、批判し合うことで、双方がそれぞれの考えを修正し、単なる思い込み(doxa:ドクサ…

日記:目先の権力闘争に明け暮れ将来に禍根を残すな

ハーバー・ビジネス・オンライン編(上西充子、田中信一郎解説)『枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)到着。「枝野幸男の演説は…あるべき民主主義とは何か、あるべき国会審議とは何かを、教えてくれる」=上西充…

日記:グローバルな市民精神は本当に人文学を必要としているのでしょうか?

- グローバルな市民精神は本当に人文学を必要としているのでしょうか? 世界市民は事実に基づく多くの知識を必要としています。なるほど、人文学的教育を受けていなくても、学生たちはそうした知識をえることができるかもしれません。たとえば、BJPが使用…

日記:西洋史における良心

- 西洋史における良心 英語のconscienceはギリシア思想に由来する長い系譜を有しており、日本では一九世紀末に「良心」という定訳を与えられることになった。文献的に確認される初出はブリッジマン・カルバートソン訳『新約聖書』(一八六三年)と言われてい…

日記:人の暮らしのかたわらが、猫のホームグラウンド

猫は地上に舞い降りた精霊に違いない。きっと雲の上だってふわりふわりと歩けるはずだ=ジュール・ヴェルヌ。アンガス・ハイランド+キャロライン・ロバーツ(喜多直子訳)『名画の中の猫』(エクスナレッジ、2018年)とともに伯父さんは優雅な休日(°▽°) pic…

日記:自己の課題に深い信念をもつ者は、容易に戦わず、しかし戦うときには断乎として、たとえ一人でも戦うのである。

- 自己の課題に深い信念をもつ者は、容易に戦わず、しかし戦うときには断乎として、たとえ一人でも戦うのである。そこには謙虚さと、静かな力がある。バルトの文章の美しさというものがあるとすれば、おそらくそれは文体の美しさといったものではなく、人間…

日記:「実践知」としての良心学

- 「実践知」としての良心学 さらに、良心が個人の営みを超えて、よりよい社会の形成に寄与するためには、社会の現実を見据えた良心の実践が欠かせない。良心学は「実践知」としても機能すべきなのである。人と人が出会い、「共に知る」ことによって、眠って…

日記:「目的でなく手段対象に」でいいのだろうか。

- 目的でなく手段対象に 近代経済学の置かれている立場をかえりみて、新しい方向を模索しようとするとき、わたくしは一つのエピソードを想起せざるを得ない。一九六六年、アメリカの上院外交委員会によって開かれた公聴会のことである。アメリカの対外援助政…

日記:あまりに行きすぎた不平等

- 多くの人が、あまりに行きすぎた不平等を心配している。過去数年、?ウォール街を占拠(オキュパイ)せよ?からはじまったオキュパイ運動(the Occupy movement)は、もっとも背の高い巨人、すなわち「1パーセント」の高所得者層の急速な成長に抗議するもの…

日記:創価学会と靖国神社

創価学会にとって靖国は別物らしい。 pic.twitter.com/aMh7vMxIgc— 瑠璃子(桜島よし子) (@37_2_le_matin) 2018年7月24日 これは、創価学会の信仰や歴史の自殺行為でしょう。誰も注意しないのか。https://t.co/qKCIweylbV— 氏家法雄 (@ujikenorio) 2018年7月2…

日記:きわだつ自民党支持者の異質性

- きわだつ自民党支持者の異質性 これまで「排外主義」「軍備重視」、そして格差に対する意識である「格差拡大認識」「自己責任論」「所得再分配支持」についてみてきた。実は、これらの間には一定の関係がある。「排外主義」「軍備重視」を支持するひとびと…

日記:政党支持の階層化

- 政党支持も階層化した 一見したところ、実にわかりやすい結果といっていいだろう。自民党は、社会保障や貧困対策には熱心ではなく、労働の規制緩和を進めたり、富裕層の減税を繰り返すなどして、長年にわたり格差拡大を放置し、むしろその拡大を促進してき…

日記:学問の領域で『個性』をもつのは、その個性ではなくて、その仕事(ザッへ)に仕える人のみである

- さて、お集まりの諸君! 学問の領域で「個性」をもつのは、その個性ではなくて、その仕事(ザッへ)に仕える人のみである。しかも、そのことたるや、なにも学問の領域にばかり限ったことではない。芸術家でも、自分の仕事(ザッへ)に仕えるかわりになにか…

日記:神への信頼と人間への不信との間

- オックスフォード時代のロックには、一つの顕著な特質がみとめられる。それは、彼が、神への信頼と人間への不信との間を生きていたことにほかならない。たとえば、ロックは、一六五九年に、父親宛ての手紙で、「すべての事象を統御し、われわれのカオスを…

日記:うずらのじかん

- 東京R大学某研究室ここにはぢべたで暮らす研究員がいる - うずらのじかん1posted with amazlet at 18.07.16マツダユカ 上田 恵介 実業之日本社 売り上げランキング: 7,408Amazon.co.jpで詳細を見る

日記:歪曲されたキリスト教

- 南部の黒人教会は、そのルーツを奴隷制下の「見えざる教会」と呼ばれる秘密の礼拝集会にさかのぼる。白人の奴隷主は、従順な奴隷を作るために黒人奴隷に宗教教育を施し、聖書は奴隷制を肯定しており、魂の救済を得るためには奴隷は主人に従う義務があると…

日記:経済学という学問は人間社会の理解のために欠かせない。

人々を真に繁栄させるものはなにか。こうした疑問から経済学ははじまった=ナイアル・キシテイニー『若い読者のための経済学史』(すばる者)。古代ギリシアからゲーム理論まで俯瞰する本書は教養としての経済学を理解する上で最良の一冊。経済学という学問…

日記:異なった文化や風俗、言語を持つ人々が、お互いコミュニケートする場合、共通の言葉がいる。それが数学なんです

- コンピューターの思考方法は、コイントスに似ている。0−1の繰り返しというデジタルな2進法により、思考回路ができている。黒か白かをどんどん積み上げていって、「解」を求めていく。そこに「グレー」の部分はない。高性能なコンピューターほど、その作…