[現代批評覚え書:「ニュースの匠:体罰問題で入試中止=鳥越俊太郎」、「大阪・高2自殺:桑田さん『恐怖心では根性育たぬ』 大阪・教職員向けに研修」、『毎日新聞』





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ニュースの匠:体罰問題で入試中止=鳥越俊太郎
毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊

 ◇王様の言いなりに

 私は直感的に「裸の王様」というアンデルセンの童話を思い起こしました。

 大阪・桜宮高校で起きた体罰と生徒の自殺、そしてその後、橋下徹大阪市長が入試中止を声高に叫んで実行させたこと。この一連の経過を見ていて、私はやはりこれは「裸の王様」だな、と思ったのです。

 改めてその童話のあらすじを書いておきます。

 新しい服が大好きな王様の元に、ふたり組の詐欺師が布織り職人という触れ込みでやって来ます。彼らは、ばかには見えない布地を織ることができるという。王様には当然布地は見えません。しかし、家来の手前「見えない」とは言えない。褒めるしかない。家来も褒めるしかない。結局、王様は見えない衣装を着てパレードに臨みますが、見物人もばかと思われたくないので褒めそやす。そんな中で小さな子供の一人が「あ、王様は裸だ!」と叫びました……というのがアンデルセンの鋭い寓意(ぐうい)を含んだ童話の核心部分です。

 さて、今回の桜宮高校の入試中止事件。きっかけとなったバスケットボール部顧問による自殺した主将生徒への激しい体罰は、報道で見る限り、これは体罰の域を超え暴力行為ですね。

 体罰については指導のあり方の問題としてきっちりと議論をし、改善すべきところは改めなければなりません。

 橋下市長は当初、体罰一般は否定しないという趣旨の発言をしていましたが、一転、「入試中止」という極端な発言に変わりました。発言がブレるというのは原発問題や先日の選挙時での太陽の党との合併問題などを見ていて、橋下市長の傾向ではあります。が、今回はブレたことが問題ではありません。体罰問題と入試の問題はどう考えてもつながりません。論理的に飛躍があります。

 橋下市長は「学校の伝統や空気を一新させる」ために体育科とスポーツ健康科学科の入試を中止させるのだと主張していますが、これは常識的に見て無理がある理屈です。入試をやめれば体罰問題が解決するなんてことはあり得ません。

 橋下市長の入試中止措置に真っ向から反論したのは桜宮高校の在校生たちだけでした。

 「全く納得できません」

 裸の王様に大人は言いなりになっただけでした。
    −−「ニュースの匠:体罰問題で入試中止=鳥越俊太郎」、『毎日新聞』2013年02月02日(土)付。

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http://mainichi.jp/opinion/news/20130202ddm012070017000c.html



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大阪・高2自殺:桑田さん「恐怖心では根性育たぬ」 大阪・教職員向けに研修、体罰一掃訴え
毎日新聞 2013年02月03日 大阪朝刊



 大阪市立桜宮高校の体罰問題を受けて、市教委と大阪府教委のスポーツ指導に関わる教職員向け研修が2日、同市内で開かれ、元プロ野球選手の桑田真澄さん(44)が講演した。桑田さんは講演後の記者会見で「痛みや恐怖心で根性がついた実感はなく(体罰を受けた経験が)マウンドで僕を助けてくれたことは一度もない」と体罰一掃を訴えた。

 研修は非公開で、桜宮高を含む市立、府立の中学、高校の運動部顧問ら513人が参加。桑田さんがスポーツ指導者のあるべき姿について約1時間話をし、教職員と意見交換をした。

 桑田さんは記者会見で「学生時代に体罰を見るのも嫌だった。絶対服従の関係で体罰をするのはひきょう」と指摘。メジャーリーグ在籍時に訪問したアメリカの小学校や大学では、コーチが怒鳴ったり殴ったりせず選手がのびのびと野球をしていたといい、「体罰なしでもすばらしい選手が育つ証しだ。主体的に考えられる選手を育てる方法を勉強しないといけない」と語った。【原田啓之】
    −−「大阪・高2自殺:桑田さん『恐怖心では根性育たぬ』 大阪・教職員向けに研修」、『毎日新聞』2013年02月03日(日)付。

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http://mainichi.jp/area/news/20130203ddn041040011000c.html






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