書評:小熊英二編ほか著『平成史』河出書房新社、2013年。




小熊英二編ほか著『平成史』河出書房、読了。歴史は代表する何かによって描かれるが、70年代以降「『代表が成立しない』という状況を生んでいる」。本書は「社会構造と社会意識の変遷史として描くしか、『平成史』の記述はありえない」認識のもと、失われた何もないとされる近い過去を描きだす。

本書は、政治、経済、教育と社会保障、そして外交とナショナリズムが腑分けする。戦後日本社会の疾走はポスト工業化時代の到来と共に失速する。上手く対応できなかった現実を前提に、今後はどこに向かうのか。過去を踏まえ明日を展望する意欲的試みだ。

「何の歴史を語れば平成という時代を語ったことになるのか」。自由の象徴としての「フリーター」の喧伝は、自己責任とワンセットの悲哀に反転する平成の時代。語るべきものは何もないのではない。絶望に気づいていなかっただけかも知れない。





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