覚え書:「書評:自宅で楽しむ発電 中村 昌広 著」、『東京新聞』2013年8月18日(日)付。

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自宅で楽しむ発電 中村 昌広 著

2013年8月18日

◆こつこつ電気手作り
[評者]中野不二男=ジャーナリスト

 今の世の中、電力の話になると行政批判と節電ばかりだ。どれも正論なのだが、それだけではどうも…。そんなとき、「電気の手作り」をやろうというこの本を読み、元気が出てきた。家庭で消費する電力を、すべて賄おうというのではない。「最低限必要な発電・蓄電システムを個人で作る」という、小さな設備からスタートする提案である。

 一九八〇年代初めに放映されたテレビドラマ「北の国から」に、手作りの風力発電装置で裸電球が点(とも)るシーンがあった。著者はこのエピソードに、少なからず刺激された。自ら工夫して作った風力発電装置は、一台三万円もかからないという。それが今は三台になり、太陽電池パネルも併用して、“家産家消”の「お家発電所」となっている。蓄電用のバッテリーも、二個もあれば充分(じゅうぶん)なのだが、話を聞きつけた友人たちからの提供で、十八個にもなったという。

 実は私も、自転車のダイナモを利用して小型の水力発電装置を作ったことがある。だから著者の気持ちがよく分かる。知識のない役人相手の批判と“銃後の知恵”みたいな節電礼賛ばかりのメディアと違い、とにかくこつこつ着実に「自宅で楽しむ発電」の姿勢に拍手したい。基本的な考え方から本格的な風力発電装置の作り方まで、図解とともに楽しい文体で詳細に描かれている。お見事!

 (ソフトバンク新書・767円)

 なかむら・まさひろ 1959年生まれ。会社員。著書『自分で作る風力発電』など。
◆もう1冊 

 中野不二男著『暮らしの中のやさしい科学』(角川学芸出版)。犬は色弱か、など身近な疑問に答える科学エッセー。
    −−「書評:自宅で楽しむ発電 中村 昌広 著」、『東京新聞』2013年8月18日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013081802000164.html




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