覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:新たな人権侵害、危惧−−元防衛関連企業社員・渡辺鋼さん」、『毎日新聞』2014年02月27日(木)付。


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特定秘密保護法に言いたい:新たな人権侵害、危惧−−元防衛関連企業社員・渡辺鋼さん
毎日新聞 2014年02月27日 東京朝刊

 ◇渡辺鋼さん(70)

 今年末に特定秘密保護法が施行されると、特定秘密を取り扱う民間人は守秘義務を負わされ、身辺調査(適性評価)を受けることになる。

 防衛関連企業ではこれまでも、社内で対象者を調査し、防衛省に報告してきた。私の勤務した石川島播磨重工業(現IHI)では「マル防」調査と呼び、防衛省から委託された仕事を担当する社員に「経歴証明書」を提出させていた。借金の有無や額、友人の名前や住所、飲酒の程度や犯罪歴などを記入して自己申告する制度だ。

 対象者が調査を受け入れるのは、技術者は「自分の腕を認めてほしい」という思いが強く、調査を拒めば、他人に仕事を取られてしまう恐れがあると考えるからだろう。

 2002年だったと思う。同僚がインド洋に派遣されたイージス艦の修理のため、海外出張を命じられ、労働運動をしていた私が相談を受けた。同僚が「傷害保険に加入できるのか、説明もなく不安だ。家族にも言えない」と訴えたため、私は会社側に非常事態が起きた際の対応を尋ねた。しかし、会社は出張を命じた事実さえ認めず、取り合わなかった。

 民間人も自衛官同様、危険な業務に就くことがあるのに、被害を受けた場合の処遇は不明確だ。国が最終的な責任を負う公務員とは、明らかに身分保障が異なる。法が施行され制度化が進めば、今までより多くの民間人に同様の事案が起こりうる。適性評価も幅広く行われるだろう。新たな人権侵害が起きないか。心配している。【青島顕】=随時掲載

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 ■人物略歴

 ◇わたなべ・こう

 1943年生まれ。石川島播磨重工業で航空宇宙事業本部に勤務。2003年退職後、産別労組「重工産業労働組合」書記長を務めた。
    −−「特定秘密保護法に言いたい:新たな人権侵害、危惧−−元防衛関連企業社員・渡辺鋼さん」、『毎日新聞』2014年02月27日(木)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140227ddm012010062000c.html





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