覚え書:「今週の本棚・新刊:『真実 新聞が警察に跪いた日』=高田昌幸・著」、『毎日新聞』2014年05月25日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『真実 新聞が警察に跪いた日』=高田昌幸・著
毎日新聞 2014年05月25日 東京朝刊

 ◇『真実 新聞が警察に跪(ひざまず)いた日』

 (角川文庫・734円)

 北海道警の裏金を暴いた調査報道で新聞協会賞を受賞した北海道新聞の元記者が会社を追われるまでを記録した単行本に加筆・修正して文庫化した。著者と取材班は道警の捜査ミスを突いた一本の記事を巡り、反撃にさらされる。道新の幹部たちは社内経理の不祥事に介入されるのを恐れ、裏交渉に応じていく。

 取材に対して裏金の存在を否定し続けた自らのうそは棚上げし、報道を攻撃する警察幹部と、理不尽を知りつつ屈服した新聞社の幹部たち。「悪人はどこにもいない」との著者の感想は、組織の論理が正当化した凡庸な悪をかえって浮き彫りにする。

 記事の真偽を巡る訴訟で著者と警察幹部たちは再び相まみえる。天下りした警察幹部と、会社に裏切られた著者との対比が切ない。

 新聞が産業として斜陽化する中、調査報道に活路を見いだそうとする新聞社は多い。だが権力の不正を暴く報道姿勢を貫き、支えることができるのか。新聞社と読者にその「覚悟」を突き付けている。それにしても、加筆した最終章で明らかになる警察の実態は信じられないほどすさまじい。権力を監視する調査報道の必要性がここにある。(日) 
    −−「今週の本棚・新刊:『真実 新聞が警察に跪いた日』=高田昌幸・著」、『毎日新聞』2014年05月25日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140525ddm015070039000c.html





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