覚え書:「今週の本棚・新刊:『宇宙人の見る地球』=須藤靖・著」、『毎日新聞』2014年06月15日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『宇宙人の見る地球』=須藤靖・著
毎日新聞 2014年06月15日 東京朝刊
(毎日新聞社・1620円)
日常の些事(さじ)の本質を「宇宙人」の視点でとらえ、思考実験を通して理論構築を試みた随筆集だ。東京大で教鞭(きょうべん)をとる物理学者だけに、内容も科学的、と思いきや……。
冒頭、提唱される「P×I=1の法則」を例にとろう。Pは「提唱された発見や主張が真実である可能性」、Iは「それが世間の常識を超えている程度(インパクト)」。両者を掛け合わせると1に近づく、という法則だが、要するに「みんなをあっと言わせるような説ほどウソっぽい」ということ。宝くじに当てはめて精密に検証した結果だそうだ。
「対称性の自発的破れ」と題する章も、身構えて読んでみれば30年間悩まされている腰痛の原因が体の左右のアンバランスに起因しており、「これはまさに対称性の破れだ」という話だったりする。
ちなみに著者は「役に立たない科学のどこがワルイねんオモロければエイやん協会」会長(自称)。本書もその精神に貫かれている。物理学用語がちりばめられた論理的な文章にフムフムと納得し、いささか長すぎる脚注にクスクス笑い、最後はケムに巻かれても「それでいいのだ」と許せる不思議な読後感。(有)
−−「今週の本棚・新刊:『宇宙人の見る地球』=須藤靖・著」、『毎日新聞』2014年06月15日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140615ddm015070040000c.html