覚え書:「今週の本棚・新刊:『科学ジャーナリストの半世紀 自分史から見えてきたこと』=牧野賢治・著」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『科学ジャーナリストの半世紀 自分史から見えてきたこと』=牧野賢治・著
毎日新聞 2014年08月03日 東京朝刊

 (化学同人・2376円)

 新聞社の科学記者として30年、その後大学教員として20年近く科学ジャーナリズムに携わった著者が、自分史を通して描いた貴重な日本の科学報道半世紀の記録である。

 著者が科学記者として歩みを始めたのは1950年代後半。「稀(まれ)にみる科学・技術の激動の時代」に直面した新聞各社は立て続けに科学部を発足させ、科学報道に注力し始める。

 ネットも無く新聞の力が相対的に強い時代背景もあるのだろう。搭乗員が奇跡的に生還したアポロ13号爆発事故(70年)や「『鉄のカーテン』に閉ざされた」ソ連原子力取材に駆け回る記者の姿は現在よりもダイナミックではないか。特筆すべきは著者が77年から新聞紙上で続けた「反タバコ」キャンペーン。当時「四六時中、タバコ煙が充満し、床には吸殻が落ちていた」編集局は、30年以上を経て喫煙部屋すら消え、完全禁煙となった。先見である。

 「科学・技術が希望の光として、燦然(さんぜん)と輝いた時代は、残念ながら過去のものになっている。社会のなかでの科学・技術のあり方を捉えなおす時代」。東日本大震災を経て試練が続く科学ジャーナリズムへの激励の書と受け止めた。(八) 
    −−「今週の本棚・新刊:『科学ジャーナリストの半世紀 自分史から見えてきたこと』=牧野賢治・著」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140803ddm015070045000c.html





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