覚え書:「老人と子供の考古学 [著]山田康弘 [評者]島田雅彦(作家・法政大学教授)」、『朝日新聞』2014年09月07日(日)付。


3_3

        • -

老人と子供の考古学 [著]山田康弘
[評者]島田雅彦(作家・法政大学教授)  [掲載]2014年09月07日   [ジャンル]歴史 社会

■埋葬跡が語る太古の死生観

 考古学は机上の空論を嫌う。地味な遺跡の発掘に膨大な時間を費やし、確実な根拠を積み上げようやく一つの学説に辿(たど)り着く。本書は考古学界の現場報告と学説の文脈解説にかなりのページを割きつつ、埋葬跡の発掘から緻密(ちみつ)に縄文人の死生観を裏付けようとしている。子ども、犬、老人の葬られ方から、縄文時代の家族のあり方、社会における子どもと老人の位置づけ、家畜との関係、さらには縄文時代の階層構造、生と死が循環的につながる原初的死生観が浮き彫りにされる。
 すでに生産活動の一線から退いた老人と、これから生産、労働に従事する子どもは、死と再生の円環のつなぎ目になっている。だが、子どもが早死にすれば、循環に亀裂が生じ、共同体にとっても大きな損失となる。そのため特別な埋葬の仕方をし、呪術によって、その亀裂を埋め合わせようとした。その呪術に代わる何らかの思想を少子高齢化時代の日本において、磨き上げることが求められる。
    ◇
 吉川弘文館・1944円
    −−「老人と子供の考古学 [著]山田康弘 [評者]島田雅彦(作家・法政大学教授)」、『朝日新聞』2014年09月07日(日)付。

        • -

埋葬跡が語る太古の死生観|好書好日





Resize2099


老人と子供の考古学
老人と子供の考古学
posted with amazlet at 14.09.14
山田 康弘
吉川弘文館
売り上げランキング: 21,529