覚え書:「書評:坂本龍一×東京新聞 脱原発とメディアを考える 東京新聞編集局 編」、『東京新聞』2015年02月15日(日)付。

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坂本龍一×東京新聞 脱原発とメディアを考える 東京新聞編集局 編

2015年2月15日
 
◆表現の苦闘なければ
[評者]鎌田慧ルポライター
 「何を、どう伝えるのか」。報道のアルファにしてオメガである。原発問題で果敢な報道を続けている東京新聞が、環境問題の実践家でもある音楽家坂本龍一さんとの討論をまとめた。
 無関心な人たちもふくめて、原発の記事をより多くの読者に、どう届けていくのか、との難問の問いかけからまずはじまった。「深刻だ、危機的だ」というと心を閉ざす人がいる。相手が心を開くような伝え方を心がける。言い方、接し方を変える。デモも福島のおじいちゃん、おばあちゃんが入れるような形を考えないと、と坂本さんは答える。
 新聞記事の多くにどこかよそよそしい臭いがあるのは、自分で考えていないからだ、とは私見だが、坂本さんは「被災者にむけてどんな音楽を作っていきたいか」と問われ、「自分に嘘(うそ)をつかない曲」と答える。それが伝えることのエッセンスだ。記事も音楽も伝える行為であり、自分の感動と表現の苦闘がなければ伝わらない。運動もこころの表現である。
 討論への参加を依頼した記者に坂本さんは「東京新聞をどうしたら環境負荷の少ない会社にできるか」と問いかけた。それにたいする答えが本書にある。表現も運動も人間のこころに訴えかけるものだ。コミュニケーションの天才が語った言葉は平易にして奥が深い。識者の寄稿では國分功一郎氏の意見が刺激的だ。
 (東京新聞・972円)
 討論には東京新聞中日新聞東京本社)紙面刷新検討チームの記者が参加。
◆もう1冊 
 日隅一雄・木野龍逸著『検証 福島原発事故・記者会見』(岩波書店)。事故後、東電と政府が行った記者会見を検証。
    −−「書評:坂本龍一×東京新聞 脱原発とメディアを考える 東京新聞編集局 編」、『東京新聞』2015年02月15日(日)付。

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