覚え書:「今週の本棚・新刊:『少年皇族の見た戦争』=久邇邦昭・著」、『毎日新聞』2015年06月28日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『少年皇族の見た戦争』=久邇邦昭・著
毎日新聞 2015年06月28日 東京朝刊
(PHP研究所・2700円)
副題は「宮家に生まれ一市民として生きた我が生涯」。著者は1929(昭和4)年、久邇宮(くにのみや)家に生まれ、戦後の皇籍離脱まで皇族の一員だった。終戦は16歳、江田島の海軍兵学校で迎えている。大学卒業後、海運会社に入り、ビジネスマンとして英国やチリ、デンマークなどで海外勤務を重ねた。リタイア後は伊勢神宮の大宮司、神社本庁統理も歴任した。数奇な人生を振り返り、思うところをつづった自伝的回想。
元皇族としては率直な考えも記している。靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)に対し、「開戦を決定したA級戦犯の人たちが護国の英霊と言えるのであろうか」と疑問を投げかける。「神道では一度お祀(まつ)りすれば元に戻せないという考えがあるが、別座別宮にする手もないものだろうか」、「仏教のほうでも称名を唱えれば浄土に往生出来るのだし、A級戦犯の御霊(みたま)もそれぞれが菩提(ぼだい)寺に鎮まっているのだから、何も靖国神社に祀られなくてもよかったのではないか」と。
成功の見込みなく行われた戦艦大和などの特攻出撃を「鬼の仕業」と非難する。そうした思いが背景にあるのだろう。(壱)
−−「今週の本棚・新刊:『少年皇族の見た戦争』=久邇邦昭・著」、『毎日新聞』2015年06月28日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150628ddm015070024000c.html