覚え書:「遠景近景:池田大作氏の『平和思想』」、『朝日新聞』2015年09月16日(水)付。

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遠景近景:池田大作氏の「平和思想」
2015年09月16日


 安保法案の審議が山場を迎えている。公明党を応援してきた創価学会員の中では、池田大作名誉会長の「平和思想」を熱心に学んだ人ほど党に対して不信感を抱いているのではないか。

 党本部へ抗議に来た女性から「差し上げます」と、池田氏の文庫版『新・人間革命』第11巻を渡された。〈いかに大義名分をつけようが、いかに「正義」を装っても、戦争は、人間の魔性の心がもたらした、最大の蛮行であり、最大の愚行以外の何ものでもない〉。目がとまる箇所がいくつもある。

 もっと知りたくなり、『池田大作全集』(全150巻)を第1巻から開いてみた。宗教研究者が特に重要と見るのは、冷戦下の1979年に書かれた提言「二十一世紀への平和路線」。次のくだりは、まるで今の政治状況を指しているかのようだ。

 〈憲法を守ることは、国として当然のことであるが、戦後の保守政権の在り方をみると、随所に憲法の精神からの逸脱がみられる。特に最近の「有事立法」問題をめぐっての論議などは、平和憲法そのものを形骸化させかねない危険な動向が察知され、厳重な警戒を怠(おこた)ってはならないと思う〉

 こうした「原点」と呼ぶべき言葉はツイッターで拡散中だ。法案反対のデモに加わらない学会員の中にも、信仰と政治の間の矛盾に苦しむ人は多いのだろうと想像する。

 (磯村健太郎
    −−「遠景近景:池田大作氏の『平和思想』」、『朝日新聞』2015年09月16日(水)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11966316.html


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