覚え書:「いないも同然だった男 [著]パトリス・ルコント」、『朝日新聞』2015年09月06日(日)付。

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いないも同然だった男 [著]パトリス・ルコント
[掲載]2015年09月06日   [ジャンル]文芸 
 
 地味で平凡、誰にも嫌われず、でも好かれない。そんな男が恋をした。
 あこがれの美女の気を引くために、男は奇策に打って出る。泳いで英仏海峡を渡ってみせれば、彼女もあっと言うだろう。
 ばかばかしくて、非現実的な物語だ。でも、読者は気づくだろう。男の途方もない挑戦が、世の孤独な人々が歯をくいしばって歩む人生と重なることに。泳ぎながら男が流す涙が、誰もが感じたことのある、社会の理不尽さへの怒りと似ていることに。
 著者は「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」で知られるフランスの映画監督。まさに映画のシーンのように印象的な最後の場面は、やさしく、そしてほろ苦い。
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桑原隆行訳、春風社・1944円
    −−「いないも同然だった男 [著]パトリス・ルコント」、『朝日新聞』2015年09月06日(日)付。

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社会の理不尽さへの怒り|好書好日








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