覚え書:「書評:右傾化する日本政治 中野 晃一 著」、『東京新聞』2015年09月13日(日)付。

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右傾化する日本政治 中野 晃一 著

2015年9月13日


◆リベラルも小異捨て
[評者]五野井郁夫=国際政治学
 外務省が外国特派員らに対し、政府に批判的な識者をリスト化し触れ回っているという。名指しで誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)された識者の一人が本書の著者、中野晃一である。
 日本の「右傾化」を著者は、民衆から沸き上がったのではなく、統治エリート主導によるものだと分析する。立憲民主主義が現在のタガの外れた寡頭支配にとって代わられつつあると警鐘を鳴らす。
 過去には自社さや民主党政権で押し戻しがあったものの「右傾化」は勢いを緩めなかった。牽引(けんいん)役は中曽根政権以降の「新自由主義」と戦前的価値観への回帰を目論(もくろ)む復古的「国家主義」が、小異を捨ててしたたかに結合した新右派連合だ。二〇一三年、安倍総理靖国参拝アメリカ政府が「失望」を表明し釘(くぎ)を刺しても歴史修正主義の暴走は止まらない。著者は「右傾化」の次の段階として、従来の対米追従路線では統御不能な反米復古主義の噴出を懸念する。日本が国際的に四面楚歌(しめんそか)になるのも時間の問題だろう。
 著者は、近年の国政選挙で自民党への支持は棄権者も含めた全有権者の六人に一人に留(とど)まり、小選挙区マジックで多数議席を得たに過ぎないと説く。歯止めをかけようと思えば充分に可能な数字だ。ゆえに本書は、反転攻勢のためリベラル左派の連合を呼びかける。この提案実現への道は、リベラルも小異を捨て連合形成ができるか否かに懸かっているのだ。
 (岩波新書・842円)
<なかの・こういち> 上智大教授。著書『戦後日本の国家保守主義』など。
◆もう1冊 
 柳澤協二著『亡国の集団的自衛権』(集英社新書)。元防衛官僚が具体的な事例を挙げて現政権の安保政策を徹底批判。
    −−「書評:右傾化する日本政治 中野 晃一 著」、『東京新聞』2015年09月13日(日)付。

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