覚え書:「Media Times:難民批判イラスト、差別か風刺か 日本の漫画家が投稿、国内外で波紋」、『朝日新聞』2015年10月24日(土)付。

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Media Times:難民批判イラスト、差別か風刺か 日本の漫画家が投稿、国内外で波紋
2015年10月24日

シリア難民の受け入れが国際的な問題になるなかで、日本の漫画家がフェイスブック(FB)に投稿したイラストが波紋を広げている。難民に対して差別的などとして国内外のメディアが相次いで報じ、ネット上の「表現の自由」がどこまで認められるか、議論を呼んでいる。

 ■海外メディアも報道

 イラストは9月、主にログイン前の続きネット上で発表している日本の漫画家が投稿した。正面をみつめる少女のイラストとともに、「安全に暮らしたい 美味(おい)しいものが食べたい」と願望がいくつか並べられ、「他人の金で。そうだ 難民しよう!」と大きな文字が書かれている。

 イラストが、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」のジョナサン・ハイアムズ氏が撮影したシリア難民の少女の写真に酷似していると指摘された。ハイアムズ氏の申し立てを受けて今月、漫画家は「著作権は侵害していないが、彼の意見を尊重する」として削除。だが、イラストはSNSで海外に広がり、大手メディアに相次いで報じられた。

 英BBC放送(電子版)は8日、「シリアの女の子の風刺漫画は人種差別か」と題して記事を配信。9月下旬に訪米した安倍晋三首相が難民支援に約970億円の拠出を表明しつつ、受け入れに言及しなかった点とあわせて報道。日本の難民認定率が先進諸国で際立って低いと指摘し、「移民受け入れに対する反対意見は国内に根強い」と報じた。

 米ワシントン・ポスト紙(同)も9日、イラストの問題を、日本の難民行政の現状や安倍首相の発言とともに伝えている。

 難民支援に取り組む「認定NPO法人難民支援協会」のコーディネーター、田中志穂さんは「海外では安倍首相の発言とともに、欧米と日本の意識のズレを示す例として受け止められたのではないか」と指摘する。

 一方、「シリア難民をきっかけに、関心は日本でも高まっている」と感じる。協会への寄付件数は増えており、「難民に否定的な人の意見にも一つひとつ答えていく機会を増やすことで、社会としてどう乗り越えていくか模索していきたい」。

 ■「削除の対象か微妙」

 国内でも批判の声が上がり、FB側に「レイシズム(人種差別主義)と認めて削除を」と求める署名には、1万人以上が賛同した。

 河野至恩・上智大准教授(比較文学)は「イラストは、難民という弱い立場の人への無理解に基づいており、風刺とはいえない」と指摘する。ただ、「個人を直接攻撃するものではなく、FBの明確な削除対象になるかどうかは微妙」という。

 特定の個人や団体をおとしめる内容があれば、刑法の名誉毀損(きそん)や侮辱罪などになりうるが、「難民」など不特定の集団では適用が難しく、削除するかどうかは運営する事業者にゆだねられている。

 FBの規約では、人種や信仰、性別などに基づいて他人を直接攻撃する差別発言は削除すると定める。FB広報部は取材に対し「利用者が自分の責任のもとでシェアできる場となるよう願っており、自由に発信できることと、安全と尊敬のある利用のバランスを常に意識している」と説明した。

 一方で、ヘイトスピーチ問題に取り組む師岡康子弁護士は、表現の自由とのバランスを考慮しつつ、差別的表現の法規制を検討すべきだと訴える。

 (仲村和代、市川美亜子)

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 Media Times(メディアタイムズ)
    −−「Media Times:難民批判イラスト、差別か風刺か 日本の漫画家が投稿、国内外で波紋」、『朝日新聞』2015年10月24日(土)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12031763.html





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