覚え書:「今週の本棚・新刊:『北極読本 歴史から自然科学、国際関係まで』=南極OB会編集委員会・編」、『毎日新聞』2015年11月08日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『北極読本 歴史から自然科学、国際関係まで』=南極OB会編集委員会・編
毎日新聞 2015年11月08日 東京朝刊

 (成山堂書店・3240円)

 「宇宙への窓」「地球環境のセンサー」。科学者は、北極の特徴をこう表現する。極夜を彩るオーロラは宇宙から飛来する粒子が原因であり、永久凍土の溶解といった地球温暖化の影響を検出しやすいからだ。

 北極の重要性は早くから認識されてきたが、東西冷戦を背景に、観測活動は容易ではなかった。しかし、執筆陣は、ときに北欧や米アラスカなどに身を置いて観測し、また同じ極地の南極と比較して、自然や探検史、人々の暮らし、地政学など多角的な視点で実像に迫っている。

 現在、北極海の海氷は温暖化で減少し、将来、夏季に消滅するとの予測もある。アジアと欧米を結ぶ北極海航路や資源などの開発で注目され、国際政治の場で新たな勢力争いの舞台になった。日本政府も10月、北極に関する初の基本政策を決定し、航路などの国際ルール策定で主導的役割を果たすと明記した。

 執筆陣は「有史以来、この一帯が大規模な戦場にならずに済んだのは、ひとえに厳し過ぎる環境条件の故」と分析する。温暖化は、北極の環境を破壊するだけでなく、新たな紛争の火種になるとすれば、実にやるせない気持ちになる。(泰)
    −−「今週の本棚・新刊:『北極読本 歴史から自然科学、国際関係まで』=南極OB会編集委員会・編」、『毎日新聞』2015年11月08日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20151108ddm015070023000c.html



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