覚え書:「著者に会いたい:「アラブの春」と音楽―若者たちの愛国とプロテスト 中町信孝さん [文]守真弓」、『朝日新聞』2016年04月10日(日)付。

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著者に会いたい
アラブの春」と音楽―若者たちの愛国とプロテスト 中町信孝さん
[文]守真弓  [掲載]2016年04月10日

中町信孝さん=守真弓撮影

■ポップスから見る革命と挫折

 古文書を読むために留学したエジプトで、最新の音楽に魅了された。初の単著『「アラブの春」と音楽』は専門の中世史ではなく、Jポップならぬ「エジポップ」がテーマだ。
 2000年にカイロ大学に留学。アラビア語は日本で学んでいたが現地の日常生活で使う口語がわからない。勉強のため流行歌を聴き始めた。
 来る日も来る日もテレビから流れる軽快なポップス。それがイスラエルパレスチナの銃撃戦で亡くなった少年を哀悼する内容だと知り、「いろいろなことが託されている」歌の奥深さに目覚めた。
 エジプトのエンタメ界が突如、体制側と反体制側で二分されたのは11年。チュニジアに続きエジプトでも革命機運が高まると、ほぼ無名だった歌手らによるプロテストソングが人気を集めた。
 「書名だけを見ると歌が革命を起こしたというお花畑的な本だと思われるかもしれない」。だが、描きたかったのは、革命を求めた若者の熱狂がどう体制側にからめとられていったか。そこに音楽がどう関わったかだった。
 革命を支持した歌手もしなかった歌手も、その後に民主的選挙で成立したムルシ政権への批判には声を揃(そろ)えた。次第に「プロテストの歌と、新政権に対立する軍を支持するプロパガンダの歌の区別がなくなっていった」。革命への欲求を「愛国」に収束させた歌が、新政権を倒す軍の力になり、新たな強権統治を生んだ。
 日本ではこうした政治的な歌は流行しないと言う学生もいる。「でも例えば『絆』を強調し、問題意識を和らげるような歌に政治的役割はないか。エジプトの事例を見て、日本でどんなプロパガンダがありうるか考えてみてほしい」
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 DU BOOKS・2268円
    −−「著者に会いたい:「アラブの春」と音楽―若者たちの愛国とプロテスト 中町信孝さん [文]守真弓」、『朝日新聞』2016年04月10日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2016041000013.html


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