覚え書:「キリスト教主義、維持に腐心 大規模化する大学、薄れる宗教色」、『朝日新聞』2016年05月14日(土)付。

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キリスト教主義、維持に腐心 大規模化する大学、薄れる宗教色
2016年5月14日

関西学院大文学部のチャペルアワーで、聖歌隊の指導で賛美歌を練習する学生ら=兵庫県西宮市

 日本ではキリスト教の信徒数と比べてキリスト教系大学が多く、受験生の人気を集める有名大学も少なくない。大規模校になり宗教色が薄まるなかで、大学は創立の原点であるキリスト教主義の維持に腐心する。

 ■毎日30分、講話・礼拝 関学

 兵庫県西宮市の関西学院大は毎日午前の30分間、各学部のチャペルで宗教講話や音楽礼拝といった学生向けの集会を開く。4月下旬、文学部のチャペルには約150人の学生が集まり、大学の聖歌隊から賛美歌の指導を受けていた。

 1年の女子学生(18)は「初めは驚いたけど、知らない世界に触れるいい経験」と言う。出席義務はないが、必修科目「キリスト教学」の評価に反映する学部もある。学年が上がるにつれて出席が減るのが課題という。

 関学大は1889年、米国のプロテスタントの宣教師が開いた塾生19人の私塾が起源。現在は11学部、約2万3千人を擁する関西屈指の私大だ。舟木譲・大学宗教主事は「キリスト教主義をどう体現し続けるかが課題。国際社会で宗教の影響は至る所にあり、大学で基礎知識を学ぶ意義を伝えている」と話す。

 神学部では伝道者を育成し、毎年数人が輩出。以前は主に信徒のみを受け入れていたが、志願者が減り、2004年に思想・文化コースを設立して対象を広げた。土井健司・神学部長は「4年間を通して伝道者を目指す学生を一人でも増やしたい」と話す。

 ■文化・倫理学ぶ新コース設置 上智/小中高、教員養成プログラム 青学

 大規模校へと成長した大学は、キリスト教主義の維持に知恵を絞る。

 カトリック系で国内唯一の神学部がある上智大(東京)は09年、聖職者や宗教科教員養成のコースに加えキリスト教文化・倫理を学ぶ2コースを新設。それまで定員は25人程度で、学部の維持が難しかったという。光延一郎・神学部長は「神学部は大学の心臓。キリスト教的価値観を広める使命がある」と話す。

 1977年に文学部神学科を廃止した青山学院大(東京)は09年、キリスト教系小・中・高校の教員養成プログラムを創設した。「団塊世代の教員の大量退職で、キリスト教の理念を学ぶ機会のない若い教員が増えた」と伊藤悟・大学宗教部長。毎年十数人が指定の宗教科目を履修し、キリスト教系学校の全国組織と連携して就職も支援する。

 国際基督教大(東京)は創立以来、教授・准教授は信徒であることを原則とする。学内には「教員が確保できない」との議論もあったが、海外に人材を求め、外国籍教員が35%を占める。森本あんり学務副学長は「国内でキリスト教は少数派。大学のアイデンティティーを明確にし、日本の教育に多様性を確保する意義がある」と話す。(玉置太郎)

 ■120校、全私学の1割超 信者数は人口の1.5%

 文化庁の宗教統計調査では、国内のキリスト教系の信者は約200万人とされ、人口の1.5%という少数派だ。一方、公益財団法人国際宗教研究所の調査では、キリスト教系大学・短大は全国に少なくとも約120校あり、全私学の1割超を占める。

 「宗教と学校」の著書がある橘木俊詔としあき)・京都女子大客員教授によると、明治期に来日した宣教師が布教のため設立した私学校を起源とする大学が多い。「日本が先進国を目指すなか、西洋の象徴としてキリスト教文化へのあこがれは強く、各大学が人気を集めていったのではないか」とみる。

 ■主なキリスト教系大学と設立年

プロテスタント系>

 明治学院(東京)  1863年

 青山学院(東京)  1874年

 同志社(京都)   1875年

 関東学院(神奈川) 1884年

 関西学院(兵庫)  1889年

 西南学院(福岡)  1916年

カトリック系>

 上智(東京)    1913年

 南山(愛知)    1946年

聖公会系>

 立教(東京)    1874年

<超教派>

 国際基督教(東京) 1949年

 (前身の私立学校や私塾を含む)
    −−「キリスト教主義、維持に腐心 大規模化する大学、薄れる宗教色」、『朝日新聞』2016年05月14日(土)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12355872.html





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