覚え書:「悩める大学生増加中 大学も対策に乗り出す」、『朝日新聞』2016年06月04日(土)付。

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悩める大学生増加中 大学も対策に乗り出す
川口敦子2016年6月4日

陶土で器や置物を作る学生=佐賀市佐賀大学保健管理センター、大学提供(顔にぼかしをかけています)

 入学後、精神面の悩みを抱える大学生が増えている。居場所の提供や心身を考える授業など、大学が対策に乗り出した。

「上手に悩むとラクになる」はここから
■陶芸療法やセルフマネジメント授業

 佐賀大学本庄キャンパス(佐賀市)の保健管理センター。毎週水曜日、「リラクゼーションルーム」に学生が2人、3人と集まってきて、2時間かけて粘土で置物や器を作る。

 発達障害や精神の悩みを抱えた学生に施す「陶芸療法」。2014年度から採り入れた。センターによると精神的な悩みの相談は00年度は350件だったが、15年度は1500件。ほとんどの学生が孤独感を抱いているという。

 陶芸療法には1年間にのべ約100人の学生が参加している。土に触れると心が落ち着き、一緒に作ると会話がなくても緊張が和らぐ利点があるという。センター長の精神科医、佐藤武教授は「感情や悩みを言葉にできない学生が増えている。何かきっかけが必要だと思った」と話す。

 立教大学(東京都豊島区)の学生相談所カウンセラーを務める山中淑江教授らは昨年、「大学生が出会うリスクとセルフマネジメント」(学苑社)という本を出した。学生の身の回りに潜むトラブルについて考える一般教養の授業が題材だ。

 この授業は、学生部と学生相談所の提案で、2012年度に開講した。飲酒事故に薬物被害、デートDVなど社会で問題になっているテーマを取り上げ、弁護士、精神科医ら様々な分野の専門家が対策について講義する。それをもとに学生たちが、自身の心身の健康や対人関係について討論するのが特徴だ。

 授業を企画した山中教授は「1〜2年生の受講を想定していたが、どの学年も同じ比率で驚いた」と話す。「社会人として通用するのか不安になった」と受講動機を書く4年生も多い。約2万人いる在校生のうち、受講できるのは300人程度。毎年抽選になる人気ぶりという。

■24歳以下の精神疾患患者36万人

 厚生労働省の「患者調査」によると、うつ病など精神疾患の患者のうち24歳以下は全国で36万8千人(14年)。1999年の約2倍だ。

 対人関係で悩みを抱える大学生・大学院生も増加傾向にある。日本学生相談学会の理事長で、東京工業大学保健管理センターでカウンセリングを担う斎藤憲司教授は「スタッフを増やすと、それだけ相談に来る学生は増える。どの大学にも10%程度は何らかの支援を必要としている学生がいる」と指摘する。

 東工大では専門のカウンセラーのほか、退職した教員や現役の上級生が相談にのる窓口もある。斎藤教授は「逃げ場がないのが一番つらい。精神的に落ち着ける場所を大学に用意する必要がある」と話す。

アピタル:ニュース・フォーカス・特集>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(川口敦子)

    −−「悩める大学生増加中 大学も対策に乗り出す」、『朝日新聞』2016年06月04日(土)付。

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http://www.asahi.com/articles/ASJ642BWCJ64UBQU004.html


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