覚え書:「【東京エンタメ堂書店】秋のドラマ 原作もチェック!」、『東京新聞』2016年10月24日(月)付。

Resize3646

        • -


【東京エンタメ堂書店】

秋のドラマ 原作もチェック!

2016年10月24日


 秋のドラマが続々と始まりました。お気に入りの作品はもう見つかりましたか? 今回はドラマ原作の小説と漫画から、お薦め本を紹介します。 (文化部・岩岡千景)
◆仕事、恋&結婚折り合い付く? 女性の永遠の課題  
<1>

 まずは<1>宮木あや子著『校閲ガール』(角川文庫、六〇五円)シリーズ。石原さとみさん主演で話題の「地味にスゴイ!校閲ガール・河野(こうの)悦子」(日本テレビ、水曜夜十時)の原作です。
 憧れのファッション雑誌の編集者を夢見て出版社に就職した河野悦子。しかし配属されたのは、文章や原稿の誤りを直す校閲部。「こんなはずじゃなかった」と思いながらも日々奮闘する悦子の姿を描く「お仕事エンタメ」小説です。
 「校閲」という仕事は、縁の下の力持ち。「地味にスゴイ!」というのは、活字の仕事に携わる多くの人の実感でしょう。そんな地味な世界をにぎやかで楽しい物語にしています。
 小説とドラマでは物語の展開や人物の設定が多少違い、出版社や校閲部の内実を小説ではよりリアルに活写。編集者が作家のプライベートも親身にサポートする、著者近影と実際が違う…など、うなずける場面は多く、登場するいくつかの出版社は実在の社をほうふつさせます。「ママ」(そのままの意)「ひらく」(漢字をひらがなにすること)など校閲用語もさりげなく解説されています(ちなみに、その用語や使い方は新聞でも同じです)。
 悦子は口が悪く生意気だけれど、真っすぐで愛すべきキャラ。ドラマでは演技のさじ加減でイメージが変わってしまうかも…と思いましたが、演技力と愛嬌(あいきょう)を兼ね備えた石原さとみさんが、さすがの好演。小説では想像するしかない華やかなファッションでも楽しませてくれます。菅田将暉(すだまさき)さん演じる、モデルで覆面作家の男性との恋の行方も楽しみです。
<2>

 「ガッキー」こと新垣結衣さん主演で、エンディングで披露される「恋ダンス」も人気の「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS、火曜夜十時)の原作は、<2>海野つなみ作の同名漫画(講談社、既刊八巻、第一巻四六三円)です。
 主人公は、大学院を出ても内定ゼロ、派遣社員になったものの「派遣切り」されて求職中の二十五歳、森山みくり。父の計らいで、父の元部下で三十六歳の会社員、津崎平匡(ひらまさ)の自宅で家事代行の仕事を始めます。
 二人の間には快適な雇用関係が生まれますが、家族の事情でみくりが辞めることに。現状を維持したい二人は就職としての「契約結婚」という形で同居を始めます。津崎は恋愛経験のない「プロの独身」。しかし、いつしかお互いに恋愛感情が芽生え…。二人の恋と結婚生活はどうなるのか。気になってどんどん読み進んでしまいます。
 ドラマはガッキーがかわいく古田新太さんらが面白おかしくて、見ると一日の疲れが吹き飛ぶ気がします。
<3>

 最後に、今秋の作品ではないですが、吉高由里子さん主演で来年一月からテレビドラマになる漫画<3>東村アキコ作『東京タラレバ娘』(講談社、既刊六巻、第一巻四六三円)をお薦め。「〜たら」「〜れば」と、男性や結婚にタラレバばかり言っていたら独り身のまま三十歳をとうに過ぎてしまった女子たちの右往左往を描きます。
 酒のつまみから生まれた空想上のゆるキャラで、厳しい現実を教える「タラ」と「レバ」も登場。笑いと悲壮感、シリアス相混じった展開にぐんぐん引き込まれてハマること必至です。
 自分の人生と仕事や恋&結婚との折り合いをどう付けるか。女性にとって永遠の課題ともいえるテーマに向き合う三作でもあります。
    −−「【東京エンタメ堂書店】秋のドラマ 原作もチェック!」、『東京新聞』2016年10月24日(月)付。

        • -





http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/entamedo/list/CK2016102402000171.html


Resize3002


校閲ガール<校閲ガール> (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2016-08-25)
売り上げランキング: 113