覚え書:「日本会議研究 参院選編:下 激戦の1人区、職員派遣」、『朝日新聞』2016年08月06日(土)付。
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日本会議研究 参院選編:下 激戦の1人区、職員派遣
2016年8月6日
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写真・図版
安倍晋三首相は公示前も含めて青森選挙区に3回入り、山崎力氏(右)への支援を訴えた=7月6日午後、青森市
憲法改正に前向きな政党が3分の2の勢力を確保したことは、国民の間の憲法改正への理解が表れた結果である――。日本会議は参院選の投開票翌日の7月11日、こんな声明を出した。
憲法改正の国会発議に必要な改憲勢力3分の2をかけて、日本会議の本部である事務総局は、これまでにない選挙運動を展開した。
7月1日、青森市の青森県神社庁。自民党比例区の山谷えり子氏の演説会で、選挙区で苦戦していた山崎力氏の次女が訴えた。
「防衛費を『人殺し予算』と言うことは断じて許せない。(テレビ番組で共産党の発言があった際)民進党は黙認した。ああいう人たちが与党になったら、これ以上怖いことはない」
会場の片隅に、白いワイシャツ姿の男性がいた。東京から来た日本会議の職員だった。青森には3〜4人が入っていたという。
この日の夕方には、山崎氏を支援する会合を市民ホールの会議室で開いた。出席者によると、日本会議青森県本部の幹部ら約20人が参加した。職員が各地の選挙情勢を尋ね、山崎氏を応援するよう求めたという。
職員は県内の神社なども回った。複数の宮司は「山崎氏が厳しいから頼むと言われた」。安倍晋三首相の応援演説を見に来るよう、職員から誘いの電話を受けた県本部の幹部もいる。
■「3分の2、左右」
日本会議の本部は、自民党で参院比例区の山谷、阿達雅志、有村治子、衛藤晟一の4氏を推薦しており、これまでは比例区の選挙運動が中心だった。
だが、今回は「比例区ではなく3分の2を左右する1人区が勝負だ」(幹部)と位置づけていた。実動部隊である神道政治連盟などの協力団体に任せることなく、20人に満たない事務総局から、自民党候補の劣勢が予想された青森、宮城などに職員を派遣した。
山谷陣営に対しても「全国遊説で激戦区に入る際、選挙区の候補者を一緒に回らせてもらえないか」と協力を求めるほどだった。
自民党の中原八一氏が苦戦した新潟選挙区では「空中戦」も展開された。
「いま、日本が危ない!! 民共一体化」「共産党にむしばまれる民進党」。公示直前の6月20日、新潟県内に配達された新聞計26万部に、野党共闘を批判するビラが折り込まれた。ビラには「日本の平和と自由と民主主義を守る会」とあった。関係者によると、日本会議新潟県本部の役員が「新潟日報サービスネット」に申し込んだという。
日本会議は「本部は全く関与していない」(広報)としている。ただ、ある幹部は「憲法改正発議か、共産党支配の始まりかの戦いだ。この危機感を地方にも浸透させなければならない」と周囲に話していた。
結局、青森でも新潟でも自民党候補は敗れた。日本会議の関係者は「東日本で地方組織が弱い。自民党の1人区の結果と同じだ」と分析する。発議後の国民投票を見すえ、参院選前から地道な運動を進めている。
女性票を掘り起こそうと、各地で女性向けの「憲法おしゃべりカフェ」を開く。6月に主催した東北地方の女性は「東京の職員から2〜3人でもいいからと頼まれ、庭の花を見ながらお茶を飲もうと主婦ら十数人を誘った」と言う。
自民党の若林健太氏が敗れた長野県でも、3月に東京の職員が県議会の控室を訪れ、自民党県連主催の集会を打診したという。
7月19日夜、日本会議福岡の筑豊支部の定例会で、吉岡輝城支部長は決意を語った。「ようやく、なんとか3分の2を満たした。これを機会に、是が非でも憲法改正の運動を進めたい」
■全国キャラバン
安倍首相は今月3日の記者会見で、憲法改正について「大切なのは国民投票で過半を得ることができるかではないか。憲法審査会で議論を深め、それが国民的な議論につながることを期待したい」と述べた。
前身である「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」ができてから約40年。日本会議は首相の発言に呼応するように、9月から憲法改正を訴える「全国キャラバン」を始める。
−−「日本会議研究 参院選編:下 激戦の1人区、職員派遣」、『朝日新聞』2016年08月06日(土)付。
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http://www.asahi.com/articles/DA3S12498595.html