覚え書:「オはオオタカのオ [著]ヘレン・マクドナルド [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年11月27日(日)付。

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オはオオタカのオ [著]ヘレン・マクドナルド
[評者]蜂飼耳(詩人・作家)  [掲載]2016年11月27日   [ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝 
 
 すばらしいノンフィクション作品だ。著者のヘレン・マクドナルドはケンブリッジ大学科学史・科学哲学を学んだ女性。父の死によって精神的な危機に直面し、ある日思い立ってオオタカを飼う。少しずつ慣れていくオオタカと著者の距離感。古くからの伝統を持つ鷹(たか)狩りに挑む日々。
 イギリスの作家T・H・ホワイトの『オオタカ』の記述が随所に織り込まれ、本書に奥行きを与えている。著者はそれを批評的に読む。ホワイトの人生に困難と孤独をもたらした子供時代の虐待、サディスティックな性質や同性愛。著者は『オオタカ』を読み直しつつ、鷹狩りの経験を重ねながら、自分自身が変わっていくことを感じる。
 「たとえ想像のなかであれ、人間でないとはどういうことかをひとたび知ることができれば、そのことによって、人はより人間らしくなれるのだということを学んだ」。自然の摂理や命と死に対する、じつに深い洞察に満ちた書だ。
    −−「オはオオタカのオ [著]ヘレン・マクドナルド [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年11月27日(日)付。

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