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「障害者×感動」に疑問符 NHK「バリバラ」反響続く
真田香菜子、佐藤恵子2016年9月3日


「バリバラ」の一場面。視聴者からの意見も画面上で紹介された
写真・図版
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 障害者の姿を意図して感動的に描くメディアの手法に疑問を投げかける番組を、NHKが生放送した。8月27〜28日に放送されたチャリティー番組「24時間テレビ39『愛は地球を救う』」(日本テレビ系)の終盤と重なる時間帯。両方の番組に出演した障害者は「多くの人が障害者のことを考える日。メディアによる障害者の取り上げ方が変わることにつながれば」と話す。

 NHKの番組はEテレの情報バラエティー「バリバラ」。「バリアフリー・バラエティー」の略で、障害者らが出演し、様々なテーマについて笑いを交えつつ本音を語る。2012年に始まり、毎週日曜夜に放送している。

 28日は午後7時から「検証!〈障害者×感動〉の方程式」と題して30分間生放送。出演者らは「笑いは地球を救う」と書かれた黄色いTシャツ姿で登場し、司会者が「あの番組の裏でやってますから」と話すなど、24時間テレビを意識した演出を重ねた。

 ちょうど24時間テレビがフィナーレを迎える時間帯。SNSなどでは放送前から「バリバラが24時間テレビにけんかを売っている」と話題になった。放送後も「NHKやるなー。共感できた」「ずっと考えていきたいテーマをもらった感じ」と、反響が続く。

 番組では冒頭、豪州のジャーナリストで障害者の故ステラ・ヤングさんのスピーチ映像を流した。ステラさんは、感動や勇気をかき立てるための道具として障害者が使われ、描かれることを、「感動ポルノ」と表現。「障害者が乗り越えなければならないのは自分たちの体や病気ではなく、障害者を特別視し、モノとして扱う社会だ」と指摘した。

 一般的な「感動ポルノ」の例として、難病で車椅子生活を送る大橋グレース愛喜恵(あきえ)さん(28)を主人公にした疑似ドキュメンタリーも放送。困難な状況を周囲の支えで乗り越えて前向きに生きる姿を強調し、こうした描き方から外れる大橋さんの本音の部分をそぎ落とす制作過程を示した。英BBCが1996年、「障害者を“勇敢なヒーロー”や“哀れむべき犠牲者”として描くことは侮辱につながる」とするガイドラインを作ったことも紹介。チャリティー番組での描かれ方を不服とした障害者らによる抗議運動が背景にあったとした。

 NHKは朝日新聞の取材に「障害者=『かわいそう』『頑張っている』以外の価値観を提示していくことを大切にしている。普段、福祉分野にあまりなじみがない人にも関心を持ってもらえたのではないか」とコメントしている。日本テレビ広報部は「他局の番組に関するご質問にはお答えしていない」とした。

 大橋さんは今回、24時間テレビでも日常生活などを紹介するVTRが放映された。「どちらの番組が良い悪いと言いたいわけではない。障害者のありのままを紹介した結果、感動が生まれるのはいいと思う」としつつ、「感動ポルノが生まれ続けるのは視聴者が求めてきたから。まずはメディアが障害者の取り上げ方を変えることで、視聴者の意識も変わっていくようになれば」と話す。

 バリバラを見た障害者支援NPO「ドリーム」(名古屋市)の伊藤圭太理事(32)は「メディアの伝え方について、障害を持つ当事者が思いを語ったのが面白い。問題提起になったのでは」。障害者を感動的に描く手法は好まないが、「映像をきっかけに支援団体への寄付につながることもあり、すべてが悪いとは言い切れない」と考える。

 脳に障害があり、手足が不自由な長男(23)と暮らす札幌市の女性(45)は「私たちにとって介助のある生活は日常で、健常者が歯を磨いたり顔を洗ったりするのと同じ。そう捉えて、特別視せずに伝えてほしい」と訴える。(真田香菜子、佐藤恵子)
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http://www.asahi.com/articles/ASJ913CJ8J91UCVL00B.html





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