日記:敢えて自由であれ、そしてほかのあらゆる人々の自由を尊重し、これを守れ。

Resize4857


        • -

 カントの倫理学は、人間の良心こそ人間にとっての唯一の権威であるという命題に限定されるわけではありません。彼は、われわれの良心がわれわれに対してなにを要求できるか、ということも確立しようとしました。彼は、道徳律をいろいろと異なったかたちで表現しました。そのうちのひとつは、こうです。「汝自身の人格にも、ほかのすべての人々の人格にも存在する人間性を、いついかなるときも同時に目的として用い、決して単なる手段として用いてはならない。」〔『道徳形而上学の基礎づけ』第二版、一七八六年、カント全集、第四巻、二八七ページ〕カント倫理学の精神は、おそらく次の言葉でようやくできるでしょう。敢えて自由であれ、そしてほかのあらゆる人々の自由を尊重し、これを守れ。
 カントは、この倫理学を基礎にして自ら重要な国家論と国際法の理論を打ち立てました。彼は、この地上に永遠の平和を告げ知らせ、これを堅持するという課題のために、民族の連帯、「自由な国家の連邦主義」を要求したのです。
    −−カール・ポパー(蔭山泰之訳)「イマヌエル・カント 啓蒙の哲学者 没後一五〇周年記念講演」、小河原誠・蔭山泰之訳『よりよき世界を求めて』未來社、1995年、213頁。

        • -






Resize3879



よりよき世界を求めて (ポイエーシス叢書)
カール・R. ポパー
未来社
売り上げランキング: 466,694