覚え書:「著者に会いたい 現地レポート 世界LGBT事情―変わりつつある人権と文化の地政学 フレデリック・マルテルさん [文]沢村亙」、『朝日新聞』2017年01月22日(日)付。
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著者に会いたい
現地レポート 世界LGBT事情―変わりつつある人権と文化の地政学 フレデリック・マルテルさん
[文]沢村亙 [掲載]2017年01月22日
フレデリック・マルテル氏=北村玲奈撮影
■「寛容」をパワーにするヒント
ニューヨーク・マンハッタンからテヘランのバザール、そして新宿2丁目にも。
LGBT(性的少数者)の文化が息づく街、息を潜めつつたくましく生きる土地を訪ね歩いた。約50カ国で話を聞いたのは700人以上。LGBTの「地政学」を解き明かす取材で、同性愛者の自身すら気付かなかった「誤解や先入観がみえた」という。
「LGBTの権利=欧米の価値観」という図式はその一つ。南アフリカは2006年に同性婚を合法化。いま台湾がその一歩手前だ。表向きは同性愛が違法のレバノンの首都ベイルートは、中東の活動家たちの拠点になっていた。
それでも約80カ国が同性愛を禁じ、死刑を科す国も。インドやマレーシアなどでは同じ「刑法377条」が同性愛行為を禁じる。「英国統治のなごり。反同性愛の観念が植民支配で西欧から押しつけられた歴史にも注目すべき」
母国フランスでも子供の頃は同性愛を扱った映画や本は検閲を受けた。
その後の世界は全体として同性愛容認へと向かう。LGBTへの寛容度を地図に落とすと、女性の人権、報道・言論の自由、市民のネット利用の度合いと重なり合う。「もはや罰せられるのは同性愛ではなく同性愛への差別。この流れは誰にも止められない」
日本では三島由紀夫らの文学やコミックなど豊かなLGBT文化に目を見張った。一方で「他人と異なる生き方を好まない風潮が、息苦しくさせていないか」とも。
「LGBTへの寛容をいかに国のソフトパワーにしていくか。そのヒントが詰まっている」。だからこそ同性愛ではない日本人にも読んでほしい、という。
◇
林はる芽訳、岩波書店・4212円
−−「著者に会いたい 現地レポート 世界LGBT事情―変わりつつある人権と文化の地政学 フレデリック・マルテルさん [文]沢村亙」、『朝日新聞』2017年01月22日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017012200012.html