覚え書:「文庫この新刊! 福永信が薦める文庫この新刊! [文]福永信(小説家)」、『朝日新聞』2017年02月05日(日)付。

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文庫この新刊!
福永信が薦める文庫この新刊!
[文]福永信(小説家)  [掲載]2017年02月05日
 
(1)『終幕のゆくえ』 眉村卓著 双葉文庫 710円
(2)『黄金の時刻(とき)の滴り』 辻邦生著 講談社文芸文庫 2052円
(3)『文庫版 書楼弔堂(しょろうとむらいどう) 破曉(はぎょう)』 京極夏彦著 集英社文庫 864円
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 (1)半世紀以上SFを書き続けてきた著者の最新作、全20編。老年の男の感慨をSFの調べにのせて書く。平凡な毎日の数歩先にフシギな世界が待ち受ける。登場人物は老いても、著者の立ち位置は子供達をワクワクさせたあの頃のまま。懐かしい。そんな気持ちで読むもよし。巻末の「別に淋(さび)しいとも思わない」なる言葉に未来を見続けてきた者の悲哀を感じる。ほぼ同時期にデビューした(2)の著者はハイペースで仕事をして一気に文壇の寵児(ちょうじ)となった。様々なチャレンジを欠かさぬダイナミックな作家。それでいて優しさが覆う。本書もその一端。世界の文豪を自らの小説へと召喚するが、その小説自体がパロディになっている。芸術と遊びを混ぜる短編集。(3)今の世に名を残す実在の明治の人物達が、人生を変える本と出会った。そんな設定の謎の本屋。無論虚構。それはわかっているのだが本当にこんな場所あったかもと思わせる著者の卓抜な技術。魅力溢(あふ)れる登場人物。文章の並びの心地よさ。本をなめんなよ。これ多分著者の本音。
    −−「文庫この新刊! 福永信が薦める文庫この新刊! [文]福永信(小説家)」、『朝日新聞』2017年02月05日(日)付。

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眉村 卓
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