覚え書:「私の視点 AV出演強要 人権問題、解決へ動く時 藤原志帆子」、『朝日新聞』2017年02月09日(木)付。

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私の視点 AV出演強要 人権問題、解決へ動く時 藤原志帆子
2017年2月9日

藤原志帆子さん
 
 若い女性が、アダルトビデオ(AV)に無理やり出演させられる被害が深刻化している。被害者支援にあたるライトハウスなどにAV関係で相談にきた人は2013年は1人だったが、14年から急増。昨年は100人で、累計相談者は200人に及ぶ。ほとんどが10〜20代の女性だ。

 スタジオに着いたら、聞いていないAVの撮影だった。契約書や違約金を盾に脅され、屈して出てしまった。「9本契約だから」と次々と出演を強要された。相談者の多くが、こうした被害にあっている。
 一説にはAVに出演する女優の数は6千人から8千人、うち毎年4千人から6千人が入れ替わるとされる。母数に比べて相談者の数が限られていることから、「強要被害は大したことはない」と指摘する業界関係者の声を聞いたこともある。
 しかし、相談にくるのは全被害者の「氷山の一角」だ。支援団体以外にも全国の女性シェルターや無料電話相談にも多くの女性の声が届いている。彼女たちは「強く断れなかった自分が悪い」などと自責の念を抱える。性が絡むだけに、他人に相談しにくい特徴もある。
 それでも勇気を振り絞った女性たちからの声が、社会に届き始めた。、政府の男女共同参画会議の専門調査会は昨夏から関係者への聞き取りを始め、公明党は対策プロジェクトチームを立ち上げ、1月に初会合を開いた。
 AVメーカーらでつくるNPO法人知的財産振興協会」(IPPA)は昨夏、プロダクションから逮捕者が出た事件を受け、「健全化」を誓った。しかし、半年以上経つが成果の公表はない。自主的対応が無理ならば、「表現の自由」に配慮した上で、強要問題に対処する法規制を検討すべきだ。プロダクションを登録制にし、AV業界の監督官庁を設けるのも一案だ。
 最も力を入れたいのが啓発活動だ。被害女性の多くは高校生、専門学校生、大学生のうちに、AV関係者から声を掛けられる。スカウトの危険性、分からない契約書にサインしないことを学校の授業や集会で伝えたい。
 私たちの職員も首都圏の学校に出向いて注意喚起してきたが、各種団体が協力し、全国規模で展開すべきだ。地方から上京してきたばかりの助成は、ターゲットになりやすい。地方校での啓発活動も重要だ。
 風俗産業の一部では、若い女性を性的に搾取してきた。社会は長らく目をつぶってきたが、顕在化したAV出演強要を含め、もう放置できない。重大な人権問題と捉え、タブー視することなく問題解決に幅広く動く時だ。(構成・高野真吾)
    −−「私の視点 AV出演強要 人権問題、解決へ動く時 藤原志帆子」、『朝日新聞』2017年02月09日(木)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12788131.html





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