覚え書:「政治断簡 森友学園、問われる政権の体質 世論調査部長・前田直人」、『朝日新聞』2017年03月05日(日)付。

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政治断簡 森友学園、問われる政権の体質 世論調査部長・前田直人
2017年3月5日

 国会が風雲急を告げている。焦点は、学校法人「森友学園」への国有地売却問題。国政ニュースに冷たかったテレビの情報番組も、せきを切ったように報じ始めた。

 「国会紛糾 森友学園で安倍首相を追及 国による便宜は」「昭恵夫人2時間絶賛『公立小だと揺らぐ』」「土地取引問題 海外は」

 参院予算委の論戦が始まった翌日朝刊のテレビ欄には、こんなメニューがずらり。海外メディアも注目し、米ワシントン・ポスト紙は「日本の首相が最大の危機に直面している」と報じた。一大スキャンダルの様相である。

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 不可解な土地取引。「安倍晋三記念小学校」の名を使った寄付集め。「名誉校長」に首相夫人の安倍昭恵氏。加えて、幼稚園の運動会の選手宣誓で園児に「安倍首相がんばれ 安保法制国会通過、よかったです」などと安倍晋三首相を礼賛させる場面をとらえたテレビ映像は、「大炎上」の引き金となった。

 気になるのは、戦前教育を肯定するような右派人脈と安倍政権の関係である。その映像が放映される前の2月23日、稲田朋美防衛相は衆院予算委で、こんな答弁をした。

 「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ。文科省が言う、丸覚えさせることに問題があるということはどうなのかと思う。どういう教育をするかは、その教育機関の自由でもあると思います」

 森友学園の幼稚園は、戦前教育の基本理念となった教育勅語を園児たちに素読させている。親孝行などの道徳とともに、天皇の臣民としての秩序を説く教育勅語。その核心は、次の一文にある。

 「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」

 難解だが、訳せば「万一危急の大事が起こったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げ皇室国家の為につくせ」(1930年、文部省訳)。いざとなれば天皇のために命を捧げよということである。それを幼稚園で丸覚えとは、背筋が寒くなる。

 最近では「非常にしつこい」などと学園側を突き放す首相も2月17日の衆院予算委では、「私の考え方に非常に共鳴している方」と言っていた。「共鳴」から「しつこい」へ。態度は急変した。

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 札束を表すコンニャクなる隠語まで飛び出す疑惑の連鎖。それでも、高支持率ゆえの慢心か、国会の閣僚席は弛緩(しかん)している。1日の参院予算委で共産の小池晃氏が自民議員事務所の内部記録を暴露したとき、首相や麻生太郎財務相らはなぜか笑っていた。

 首相は野党の追及に「印象操作だ」と反発するが、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は安倍政権を後押ししてきた保守系団体・日本会議のメンバー。あまたの不可解な事実を前に「記録がない」という逃げの一手では、「共鳴」の闇は晴れようもない。記録がないなら、当時の財務省理財局長らの記憶を引き出せばいい。

 右派との接点。そして、おごり。いろんな意味で、政権の体質が問われている。
    −−「政治断簡 森友学園、問われる政権の体質 世論調査部長・前田直人」、『朝日新聞』2017年03月05日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12826373.html





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