覚え書:「特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる」、『毎日新聞』2017年03月27日(月)付夕刊。

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特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる

毎日新聞2017年3月27日 大阪夕刊

豊新小の「いきいき活動室」で子どもたちと歌う美穂蘭さん=大阪市東淀川区で、山崎一輝撮影

 授業を終えた子どもたちが、制服のままランドセルを背負って、校舎4階の教室に次々と駆け込んでくる。大阪市豊新(ほうしん)小学校(東淀川区)での「いきいき活動室」の始まりだ。学年が異なる子どもたちが机に隣り合って宿題に取り組む。その後は塗り絵、あやとり、外遊び。低学年を中心に約50人が放課後を過ごす。

 歌の時間になった。ギターを抱えた地域指導員の「らんせんせい」を子どもたちが囲み、声を張り上げて合唱が始まった。

 まちにまったうれしい放課後

 パズルのピース ぼくらを待っている

 1、2、3、4、ゴーゴーいきいき

 ひらめくメッセージ 色えんぴつでえがく

 地平線に続く まっすぐな この気持ち

 らんせんせいが作った「ゴーゴーいきいき」。勢いがあるビートに乗せ、子どもたちは歌いながら跳びはねたり、走り回ったり。そのはしゃぎぶりは、歌から得た気持ちを表現しているようだ。2年生の女の子は「ゴーゴーっていうところはジャンプしたくなる」とニコニコ。


いきいき活動室では、子どもたちの宿題も見る=大阪市東淀川区で、山崎一輝撮影
 美穂蘭さん(51)。約20年前から大阪を拠点に活動するシンガー・ソングライターだ。「聴いて喜んでくれる人がいるなら、どこへでも」。今月11日、大阪府富田林市の公民館でのライブ。会場を埋めた約200人は体を揺らし、歓声を上げ、手をたたいて喜んだ。病院や福祉施設にも定期的に通い、ボランティアとして歌を聴かせる。

 「音楽を通して子どもたちを元気にしてくれないか」。ファンとしてライブを長年見てきた「いきいき」の運営指導員、辻本裕司さん(67)から相談を受け、昨年4月から週に数回、子どもたちと向き合う。

 初めは思い通りにいかなかった。「歌いましょう」「リズム遊びをしようね」。そう呼びかけても子どもたちはつれない。「音楽嫌いや」「面白くない」「外で遊ぶ方が楽しい」。教員ではない。子育ての経験もない。悩み、疲れて、腰が引けた。

 ある日、廃品の段ボールを使い、打楽器を作ってみた。見よう見まねで段ボールをいじり始める子どもたち。箸でドラムスティックを、ペットボトルでマラカスを作ると、即興の合奏が始まった。夢中になってリズムを紡ぎ出す子どもたちを見て「一つのものをみんなで作るきっかけ。自分がそれになればいいんだ」。そう思うと、少し気持ちが楽になった。

 子どもを主人公に歌を作ったらどうだろう。作りかけのメロディーに、「いきいき」での様子を描いた歌詞を乗せた。「気に入ってくれるかな」。教室で初めて披露すると、女の子がせがんだ。「もう一回、歌って」。その歌が「ゴーゴーいきいき」だった。

 先月開かれた指導員の集まりで、市内200以上ある放課後事業の中で、特色ある活動として取り上げられ、「ゴーゴーいきいき」を弾き語りで披露した。


さあ歌の練習だ。黒板に張る歌詞の表記は平仮名が中心=大阪府富田林市で、山崎一輝撮影
 29日、豊新小の「いきいき」で、新1年生を迎える催しがある。みんなで「ゴーゴーいきいき」を歌って歓迎するのだが、同時にこの1年間の、らんせんせいと子どもたちとの成果発表でもある。立候補を募って当日の役割分担も決める。前に立って指揮する係。段ボールで作った太鼓をたたく係。それぞれが自分の役割を果たせば、それがハーモニーとなり、一つの成果が生まれる。そんなことを子どもたちが知ってくれればうれしい、と思う。

 本番では、子どもたちの元気を存分に引き出してあげるつもりだ。<文・今西拓人/写真・山崎一輝>=今回で終わります

大阪・西成で来月28日ライブ

ワンピース姿で熱唱。ライブでは別の顔を見せる=大阪府富田林市で2017年3月11日、山崎一輝撮影
 次回のライブは4月28日午後7時、大阪市西成区萩之茶屋2の「難波屋」で。歌手でギタリストのカオリーニョ藤原さんと共演。投げ銭制。4月中旬には故郷、宮崎県延岡市のイベントに出演する。

    −−「特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる」、『毎日新聞』2017年03月27日(月)付夕刊。

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