覚え書:「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年07月16日(日)付。

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池上冬樹が薦める文庫この新刊!

文庫この新刊!
池上冬樹が薦める文庫この新刊!
2017年07月16日
 (1)『口訳万葉集』(上・中・下) 折口信夫著 岩波現代文庫 各1512円
 (2)『ひたすら面白い小説が読みたくて』 児玉清著 中公文庫 886円
 (3)『フロスト始末』(上・下) R・D・ウィングフィールド著 芹澤恵訳 創元推理文庫 各1404円
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 (1)は、折口信夫が1916年から翌年にかけて発表した文学史上初の口語訳万葉集万葉集がこれほど身近で、美しく切なく響く歌集であるとは思わなかった。学問としてよりも、共感と憧憬(しょうけい)を覚える書物として折々に触れたい。
 (2)は、俳優・児玉清の文庫解説集だが、どれも読み応えがある。何よりも感動と興奮があり、喜びと楽しさがあり、本と作家に対する愛が脈打っている。人の心を鷲掴(わしづか)みにする書き出しから、作品のみならず作家論へと話を広げて縦横無尽。感嘆。脱帽です。
 (3)は、複数の事件が同時並行していく警察小説の傑作。相変わらずプロットは素晴らしく巧緻(こうち)で、語り口は素晴らしく下品(笑)。強制異動の標的になったフロスト警部は無能な上司と戦い、部下たちをねぎらいながら、不眠不休の捜査活動に邁進(まいしん)する。最後の最後まで、それこそ最終行まで読ませる圧倒的な面白さだ。フロスト警部ものの第6作で最終作。過去5作すべて年間ミステリーのベスト1に輝いたが、本書もベスト1は確実。必読!
    −−「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年07月16日(日)付。

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