覚え書:「ぐるぐる 博物館 [著]三浦しをん [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞』2017年07月30日(日)付。

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ぐるぐる 博物館 [著]三浦しをん
[評者]野矢茂樹(東大教授)
[掲載]2017年07月30日
[ジャンル]文芸 アート・ファッション・芸能

 三浦さんが博物館に足を踏み入れる。「ほえー」と感嘆し、「うーむ」と唸(うな)り、「あのねあのね」と興奮してにじり寄ってくる。一言でいえば、たがが外れる。つられて読者も、たがが外れる。ほえー。
 それで私も気がついた。博物館というのがそもそもたがの外れたものなのだ。声高に語るものは何もない。だがその静謐(せいひつ)は圧倒的な過剰さに満ちている。ある場所は一面の縄文土器。ある場所は石、石、石。ある場所はめがねとめがねに関わる物。ある場所はボタンとバックル1600個。たんに物が溢(あふ)れているだけではない。学芸員たちの思いも、過剰である。
 私はさまざまなボタンの写真を見て、なんというか、うむむ、三浦さんの言葉を引こう。「だってだって、ものすごーく細工が細かくて、色も柄も材質もうつくしくて、宝石のようなボタンがたくさん並んでいるのですもの。かわいらしいお菓子みたい!」なのである。いや、ほんと。
    −−「ぐるぐる 博物館 [著]三浦しをん [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞』2017年07月30日(日)付。

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