覚え書:「男尊女子 [著]酒井順子 [評者]斎藤美奈子 (文芸評論家)」、『朝日新聞』2017年08月06日(日)付。

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男尊女子 [著]酒井順子
[評者]斎藤美奈子 (文芸評論家)
[掲載]2017年08月06日
[ジャンル]人文 社会
 
 14年前、『負け犬の遠吠(とおぼ)え』で30代独身女性の生態を活写した酒井順子さんのジェンダー論である。
 男尊女子とは〈女は男を立てるもの。女は男を助けるもの〉という感覚に生きがいを感じちゃってる女子のこと。運動部の女子マネとか、会社でお茶を淹(い)れたがる総合職の女子とかね。
 男を立てねばと考える女は、夫のことも「主人」と呼ぶ。女性芸能人のブログを見回して、夫の呼び方をチェックしたくだりがおもしろい。ゲッ、あの人もこの人も「主人」派か。お、この人は「夫」派で、こっちは「パパ」かい(本の中では実名です)。「主人」派はどこか自慢げだ。私には家庭が大事なの、私にも経済力はあるけど夫をちゃんと立ててんのよーん。
 男尊女卑はとうに克服されたかと思いきや……な日常を軽−く揶揄(やゆ)した筆法は糾弾よりも怖くて楽しい。立ててもらいたい男たちへのメッセージは〈自分で立てば? 立てるよね? 立てないなら、寝てれば?〉。
    −−「男尊女子 [著]酒井順子 [評者]斎藤美奈子 (文芸評論家)」、『朝日新聞』2017年08月06日(日)付。

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