覚え書:「「多様なジェンダー、科学強くする」 米科学誌「セル」マーカス編集長に聞く」、『朝日新聞』2017年07月06日(木)付。

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「多様なジェンダー、科学強くする」 米科学誌「セル」マーカス編集長に聞く
2017年7月6日

 東京都内でこのほど開かれた「ジェンダーサミット10」で、科学分野でのジェンダーの多様性が議論された。参加者の1人、米科学誌「セル」のエミリー・マーカス編集長に聞いた。(聞き手・錦光山雅子)

 ■研究者もデータも

 ここ数年、科学でのジェンダーの多様性が非常に重要だと認識され、取り組みが広がっている。

 セルを傘下に持つ情報分析・学術出版社『エルゼビア』では、会議の講演者や編集会議のメンバーに占める性別の比率を常に意識し、多様性が実現できているかをみている。傘下の学術誌の編集委員を務める研究者や主催する会議での講演者の女性の割合が増えた。セル誌編集部員12人のうち女性が10人を占めている。

 2年前から、投稿された論文の筆者、論文の妥当性を評価する査読者のいずれも、名前や所属、性別を明らかにしない「ダブルブラインド・ピアレビュー」という手法を試験的に導入している。査読者はこれまでも匿名だったが、筆者は氏名や所属を明らかにするのが一般的だった。いずれも匿名にすればジェンダーを始めとするバイアスが評価に影響されにくくなる。

 多様性は実験データにも及ぶ。実験で用いられる動物の雄と雌の比率などのバランスを考慮するよう、論文の投稿要領で提言している。偏りがあると、実用段階で効果が特定の性別に偏るなど弊害が生じるおそれがあるためだ。

 多様化にこだわるのは、科学をより強くするため。私の専門の生物学では、遺伝子がよりかけ離れた同士をかけ合わせていくことで生物がより強くなっていく現象を、「雑種強勢」(ハイブリッド・ビガー)と呼ぶ。

 エルゼビアがドイツの研究分野での男女格差を分析した報告書によると、女性研究者の方が同じ目的のために協力して働くのが得意という傾向が見られた。論文の執筆者に女性が増えたことで、科学への視点がより多様になり、研究の内容が強くなっているという印象がある。

 私自身、研究をするうえで女性であるがゆえの障壁があるとは思ってこなかった。だが、年を経るに従い、性別による違いはあると思うようになった。男性の多い組織の中で偏見は見えにくいが、女性であることがそれなりの影響を与えていると思っている。

 <訂正して、おわびします>

 ▼6日付科学面「多様なジェンダー 科学強くする」の記事で、「セル傘下の情報分析・学術出版社『エルゼビア』」とあるのは、「セルを傘下に持つ情報分析・学術出版社『エルゼビア』」の誤りでした。
    −−「「多様なジェンダー、科学強くする」 米科学誌「セル」マーカス編集長に聞く」、『朝日新聞』2017年07月06日(木)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S13021026.html





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