覚え書:「【東京エンタメ堂書店】「ゴロウ・デラックス」司会 稲垣吾郎さんの読書」、『東京新聞』2017年11月20日(月)付。

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【東京エンタメ堂書店】

ゴロウ・デラックス」司会 稲垣吾郎さんの読書

2017年11月20日

 今週は、読書の秋にぴったりのゲストが登壇です。著名な作家をゲストに招いてトークするバラエティー番組「ゴロウ・デラックス」(TBS、毎週木曜深夜0時58分〜)で長く司会を務めているタレントの稲垣吾郎さんに、読書の楽しみやお薦めの本について語ってもらいました。
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 もともと自分はそこまで読書家というわけでもなかったんです。番組開始(2011年4月)の直後は、課題図書を毎週1冊読むのが大変だと思っていました。でも、だんだん読書の習慣が付いてきた。この6年間でけっこうな冊数を読みましたが、まだまだ全然足りないなって思います。
 午前中に読むのが好きなんです。場所は自宅のリビングとか、気候のいいときはベランダや公園に出て読むこともあります。読書は映像と違って、こちらから本の世界に入っていかなきゃいけない。労力や時間はかかりますが、その分、読み終えた時は達成感があります。本屋さんも大好き。店内を歩いているだけで気持ちいいですよね。あの整理整頓された雰囲気とか、紙の匂いとか、静けさとか。
 「ゴロウ・デラックス」は個性豊かな作家の方々のトークが聴ける、稀有(けう)な番組だと思います。赤川次郎さん、渡辺淳一さん、浅田次郎さんなど、あまりバラエティーに出演されない先生方にも来てもらいました。
◆今までない感覚

 最近取り上げた本では、グリコ・森永事件を扱った塩田武士さんの小説『罪の声』(講談社、1782円)が面白かった。塩田さんは元新聞記者ということもあり、ものすごい取材量で、フィクションとノンフィクションの混ざり方も独特です。読み終えて「これがグリコ・森永事件の真相なんじゃないか」と思ったほど。こんな感覚を与えてもらった読書は今までなかった気がします。
◆おどろおどろしい世界観

 子どものころは江戸川乱歩が好きで、横溝正史金田一耕助役を演じたこともあるので、おどろおどろしい世界観の小説も好きです。その点では、桜庭一樹さんの小説『ほんとうの花を見せにきた』(文春文庫、756円)が印象に残っています。あの冷ややかな暗さが心地よくて、桜庭さんの他の少女小説も読むようになりました。
◆優しさがにじむ

 ほかのゲストで印象的なのは『羊と鋼の森』(文芸春秋、1620円)で本屋大賞を受賞した宮下奈都さん。小説もじんわり優しくて、人柄がにじみ出ていると思いました。2回出演してもらっている東山彰良(あきら)さんもすてきな方で、作品の舞台の台湾に行ってみたくなりました。
 やっぱり小説をよく読みますね。ベースは恋愛とかミステリーとかあった方が読みやすいんですが、そこに濃密な人間模様が描かれている作品が好きです。
 今、若い人が読書離れしていると言われます。でも僕自身、10代や20代で読んだサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』やアゴタ・クリストフの『悪童日記』などの本を、よく覚えているんです。ピュアで新鮮な感性を持っている時期に、本との出会いを大事にしてほしい。僕も、本に関わる仕事はライフワークのようにしていけたらと思っています。 (聞き手・樋口薫)
    −−「【東京エンタメ堂書店】「ゴロウ・デラックス」司会 稲垣吾郎さんの読書」、『東京新聞』2017年11月20日(月)付。

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東京新聞:「ゴロウ・デラックス」司会 稲垣吾郎さんの読書:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)


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