覚え書:「書評:風刺画とアネクドートが描いたロシア革命 若林悠 著」、『東京新聞』2017年11月05日(日)付。

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風刺画とアネクドートが描いたロシア革命 若林悠 著

2017年11月5日
 
社会主義の闇 色濃く
[評者]清水勲=戯画・風刺画研究家
 風刺画とは、事件の実態や社会の矛盾について、批判を込めて大衆にわかりやすく画で示すものである。

 本書は、第一次世界大戦終結直前に起こったロシア革命(一九一七年)を、当時描かれたロシア、ドイツ、フランスなどの風刺画とコマ割り漫画およびアネクドート(ロシアの政治的ジョーク)を通して興味深く総括している。風刺画の点数は八十七点。ロシア革命に関する世界の主要な風刺画を集めた感がある。

 日本は大正デモクラシーの時代だったので、社会主義者はこの革命に大いに共感したようだが、この事件関連の風刺画はあまりない。その点で本書は、風刺画による貴重な証言集だといえる。

 本書で風刺される主たる対象者はレーニン、トロツキースターリンである。彼らを「革命家たち」「権力闘争」「独裁者」の三章に分けて紹介している。独裁者とはスターリンのことである。トロツキー暗殺など、スターリンの暗黒面を紹介した最終章は、社会主義国の宿命を強く感じさせる。フランスの風刺画は二〜六コマのものがほとんどで、しかも各コマに短い文章を付した「漫画漫文」スタイルのところが異色だ。

 風刺画は歴史の中から生まれる。そして、歴史書が語りつくせない部分をそれはカバーしてくれる。本書の価値はそこにある。
    −−「書評:風刺画とアネクドートが描いたロシア革命 若林悠 著」、『東京新聞』2017年11月05日(日)付。

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東京新聞:風刺画とアネクドートが描いたロシア革命 若林悠 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)


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風刺画とアネクドートが描いたロシア革命
若林 悠
現代書館
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