日記:ヒューマニズムは、いまの実用になればいい


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 インディアンを縄でたたきつぶす開拓民のヒューマニズムと、仲間をつぎつぎにギロチンにかけた野心家共のヒューマニズムとは、全くおなじ、石と鉄のなかで生きてきた人間の思考の所産だ。植物的な日本人の胃袋が、どうやってそれを消化するか。過去のモラルをどうしばり首にできるか。若い世代はおそらく、事がそんなことに立ちいたるときの、心の用意などないにちがいなし、若くない時代の人間たちは、知っていても、そんな問題は敬遠するだろう。ヒューマニズムは、いまの実用になればいいのだから、汚れても、ほころびても、利用するだけ得ちんというものだ。
    −−金子光晴ヒューマニズムについて」、金子光晴『自由について 金子光晴老境随想』中公文庫、2016年、57−58頁。

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