日記:ヒューマニズムは、いまの実用になればいい
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インディアンを縄でたたきつぶす開拓民のヒューマニズムと、仲間をつぎつぎにギロチンにかけた野心家共のヒューマニズムとは、全くおなじ、石と鉄のなかで生きてきた人間の思考の所産だ。植物的な日本人の胃袋が、どうやってそれを消化するか。過去のモラルをどうしばり首にできるか。若い世代はおそらく、事がそんなことに立ちいたるときの、心の用意などないにちがいなし、若くない時代の人間たちは、知っていても、そんな問題は敬遠するだろう。ヒューマニズムは、いまの実用になればいいのだから、汚れても、ほころびても、利用するだけ得ちんというものだ。
−−金子光晴「ヒューマニズムについて」、金子光晴『自由について 金子光晴老境随想』中公文庫、2016年、57−58頁。
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自由について 金子光晴老境随想 (中公文庫)
posted with amazlet at 18.06.08