日記:神への信頼と人間への不信との間
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オックスフォード時代のロックには、一つの顕著な特質がみとめられる。それは、彼が、神への信頼と人間への不信との間を生きていたことにほかならない。たとえば、ロックは、一六五九年に、父親宛ての手紙で、「すべての事象を統御し、われわれのカオスを統御して、そのなかからわれわれにとって最善であり、われわれがそれに黙従しなければならないものを引きだしてくれ」る「神の手」への絶対的な信頼と対照しながら、次のように述べている。「私は、これまで、長い間、人間に信頼を置かないことを学び知らされてきました」。
ロックのうちに、そうした人間への不信を育んだ要因は二つあった。一つは、サイドの内戦への危険をはらんで揺れ動く王政復古前夜における同時代人の動向であった。ロックは、この時期、彼らが、「戦争と流血との妖精」にとりつかれて「戦火と剣と破壊」以外のものを「夢想しな」い「狂気の世界」をつくりだしているとして、「理性的被造物」からほど遠い同時代人への不信と絶望感をつのらせていったからである。
しかし、ロックには、より個人的なレベルで人間への不信をかきたてる第二の要因があった。それは、ポファムの保護に支えられて生きて来た他者依存的な生き方にひそんでいた危うさが現実化したことである。
−−加藤節『ジョン・ロック 神と人間との間』岩波新書、2018年、10頁。
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