覚え書:今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針

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今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針

「与党とその候補者を支持しない」

来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました。その理由は、安倍政権は民主政治の根幹をなす立憲主義を軽視し、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行し、海外に向かっては緊張を高め、原発の技術輸出に注力するなど、私たちの信仰や信念と相容れない政策や政治運営を行ってきたからです。

戦後の一時期、東西冷戦下で国内が政治的に左右に分裂して社会的混乱に陥っている時、当教団の創始者谷口雅春先生は、その混乱の根源には日本国憲法があると考えられ、大日本帝国憲法の復元改正を繰り返し主張されました。そして、その実現のために、当教団は生長の家政治連合(生政連)を結成(1964年)して、全組織をあげて選挙活動に取り組んだ時代がありました。しかし、やがて純粋な信仰にもとづく宗教運動が政治運動に従属する弊害が現れ、選挙制度の変更(比例代表制の導入)によって、政党と支持団体との力関係が逆転したことを契機に、1983年に生政連の活動を停止しました。それ以降、当教団は組織としては政治から離れ、宗教本来の信仰の純粋性を護るために、教勢の拡大に力を注いできました。

この間、私たちは、第二代総裁の谷口清超先生や谷口雅宣現総裁の指導にもとづき、時間をかけて教団の運動のあり方や歴史認識を見直し、間違いは正すとともに、時代の変化や要請に応えながら運動の形態と方法を変えてきました。特に、世界平和の実現など社会を改革する方法については、明治憲法の復元は言うに及ばず、現憲法の改正などを含め、教団が政治的力を持つことで“上から行う”のではなく、国民一人一人が“神の子”としての自覚をもち、それを実生活の中で表現し、良心にしたがって生きること。政治的には、自己利益の追求ではなく、良心(神の御心)の命ずることを、「意見表明」や「投票」などの民主的ルールにしたがって“下から行う”ことを推進してきました。

私たちは、社会の変革は、信徒一人一人が正しい行動を“下から”積み上げていくことで実現可能と考え、実践しています。その代表的なものは、地球環境問題への真剣な取り組みです。人間の環境破壊は、今日、深刻な気候変動を引き起こし、自然災害の頻発や、食糧や資源の枯渇、それにともなう国家間の奪い合いや国際紛争の原因となっています。この問題は、資源・エネルギーの消費を増やす経済発展によっては解決せず、各個人の信念とライフスタイルの変革が必要です。私たちはそれを実行することで、世界平和に貢献する道を選びました。

具体的には、私たちは宗教団体として初の環境マネージメントシステムISO14001の認証取得(2001年)をして、それを全国66の拠点に及ぼしました。また、莫大なエネルギーを消費する大都会・東京を離れ、国際本部の事務所を山梨県北杜市に移転し、そこに日本初のゼロ・エネルギー・ビル“森の中のオフィス”を建設して(2013年)、地球温暖化の最大の原因である二酸化炭素を排出しない業務と生活を実現しています。最近では、この生活法を全国に拡大する一助として、信徒からの募金により京都府城陽市にメガソーラー発電所(1700kW)を、福島県西白河郡西郷村に大規模ソーラー発電所(770kW)を建設し、稼働させています。これらの運動は、創始者谷口雅春先生が立教当初から唱導してきた「天地の万物に感謝せよ」(大調和の神示)という教えの現代的展開であり、人類だけの幸福を追求してきた現代生活への反省にもとづくものです。

ところが安倍政権は、旧態依然たる経済発展至上主義を掲げるだけでなく、一内閣による憲法解釈の変更で「集団的自衛権」を行使できるとする”解釈改憲?を強行し、国会での優勢を利用して11本の安全保障関連法案を一気に可決しました。これは、同政権の古い歴史認識に鑑みて、中国や韓国などの周辺諸国との軋轢を増し、平和共存の道から遠ざかる可能性を生んでいます。また、同政権は、民主政治が機能不全に陥った時代の日本社会を美化するような主張を行い、真実の報道によって政治をチェックすべき報道機関に対しては、政権に有利な方向に圧力を加える一方で、教科書の選定に深く介入するなど、国民の世論形成や青少年の思想形成にじわじわと影響力を及ぼしつつあります。

最近、安倍政権を陰で支える右翼組織の実態を追求する『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社刊)という書籍が出版され、大きな反響を呼んでいます。同書によると、安倍政権の背後には「日本会議」という元生長の家信者たちが深く関与する政治組織があり、現在の閣僚の8割が日本会議国会議員懇談会に所属しているといいます。これが真実であれば、創価学会を母体とする公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。事実、同会議の主張と目的は、憲法改正をはじめとする安倍政権の右傾路線とほとんど変わらないことが、同書では浮き彫りにされています。当教団では、元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、同書にあるような隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。先に述べたとおり、日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です。彼らの主張は、「宗教運動は時代の制約下にある」という事実を頑強に認めず、古い政治論を金科玉条とした狭隘なイデオロギーに陥っています。宗教的な観点から言えば“原理主義”と呼ぶべきものです。私たちは、この“原理主義”が世界の宗教の中でテロや戦争を引き起こしてきたという事実を重く捉え、彼らの主張が現政権に強い影響を与えているとの同書の訴えを知り、遺憾の想いと強い危惧を感じるものです。

当教団は、生政連の活動停止以来、選挙を組織的に行うなどの政治活動を一切行ってきませんでした。しかし、政治に触れる問題に関して何も主張してこなかったのではなく、谷口雅宣現総裁は、ブログや月刊誌を通して“脱原発”や“自然エネルギー立国”を訴え、また日米の外交政策を分析して、それに異を唱えたり、注文をつけたりしてきました。また、昨年は憲法を軽視する安保法案に反対する立場を明確に表明されました。

私たちは今回、わが国の総理大臣が、本教団の元信者の誤った政治理念と時代認識に強く影響されていることを知り、彼らを説得できなかった責任を感じるとともに、日本を再び間違った道へ進ませないために、安倍政権の政治姿勢に対して明確に「反対」の意思を表明します。この目的のため、本教団は今夏の参院選においては「与党とその候補者を支持しない」との決定を行い、ここに会員・信徒への指針として周知を訴えるものです。合掌。

2016年6月9日

宗教法人生長の家

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今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針 「与党とその候補者を支持しない」 - ニュースリリース - 生長の家





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覚え書:「国際秩序 [著]ヘンリー・キッシンジャー [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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国際秩序 [著]ヘンリー・キッシンジャー
[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]歴史 
 
■自制、力、正統性の釣り合いを

 国際政治学キッシンジャーの基本的な歴史観・世界観を凝縮した研究書である。フォード政権で国務長官も務めたのだから、その理論は現実の中で応用、援用あるいは微調整されていたことも窺(うかが)える。加えて本文中にはわずかとはいえ、「私は」という主語のもとで自らの出自や生育時の歴史的環境も語られていて、それが論の裏打ちの役割も果たしている。
 人類史はこの数世紀、どのような国際秩序をつくろうとしてきたのか、それぞれの地域の特性はどう生かされたのか、政治家や外交官、戦略家たちはどういった思想・哲学のもとで動いたのか。それらを実証していくわけだが、これには幾つかの尺度や教理が必要である。
 著者はその教理のひとつにヴェストファーレン(ウェストファリア)条約を挙げる。「(この条約は)世界中にひろまっている新しい国際秩序の概念の先駆けとして、格別な共鳴を得ている」と高い評価を与えている。公式の会議や首脳同士の会談から秩序が生みだされたわけでなく、紛争や戦争が起こったら当事者が真摯(しんし)に話し合い、和平の秩序をつくりあげるシステム。1618年から48年までの三十年戦争終結させるために、ドイツのヴェストファーレンの町に当事者が集まり、戦闘は続いているのに、とにかくその妥協点(キリスト教世界の平和)を求めて和平条約をまとめあげる。ここに、ヨーロッパの秩序の基礎単位は国家であり、国家の主権という概念が生まれた。
 この条約に至るプロセスに、世界秩序づくりの知恵があった。18、19世紀の人類史は秩序(つまり国際社会の枠組みと自国の位置)を求める戦いだった。フランス革命とその後の啓蒙(けいもう)思想の絶頂期、ウィーン会議時の最強国ロシアの発想、国民国家誕生とナショナリズム、戦略家が欠けた第1次世界大戦の不幸な戦争内容、ヴェルサイユ条約の歪(ひず)みで民主主義の秩序が解体していく道筋、現在、ヨーロッパ自体が宙に浮いた存在になっているとの分析、イスラムの台頭、それらを詳述しながら、著者はアジアにこそヴェストファーレン条約の影響が色濃く残っていると説く。
 中国やインド、日本のこの2、3世紀の動きを見つめながら、これらの国に欠けている点や、秩序をつくりえない歴史上の背景も描いている。「秩序はつねに、自制、力、正統性の微妙な釣り合いを必要」と理解する政治家が望まれる、との見方は鋭い。全体に、新しい秩序づくりにアメリカの果たす役割が大きいことが巧みに論証されている点に、抵抗を覚える向きもあるだろう。だが、その本質は理論と実践の合一である。
    ◇
 Henry Kissinger 23年生まれ。ドイツ出身。ナチスの迫害を逃れて米国亡命。ニクソン政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官、フォード政権の国務長官。73年にノーベル平和賞。著書『外交』など。
    −−「国際秩序 [著]ヘンリー・キッシンジャー [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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自制、力、正統性の釣り合いを|好書好日



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覚え書:「2050 近未来シミュレーション日本復活 [著]クライド・プレストウィッツ [評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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2050 近未来シミュレーション日本復活 [著]クライド・プレストウィッツ
[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]経済 
 
■夢の成功国家、実現への秘策は

 2050年の日本。ワシントンDCを飛び立った超音速旅客機ミツビシ808は2時間半の快適な旅を終え、羽田空港に着陸。訪問客は、世界最先端の情報技術で社会システムの利便性を飛躍的に引き上げ、イノベーション大国として台頭した日本の快適さを味わう。訪ねた企業では、ここは北欧かと見紛(みまが)うばかり、女性が取締役会の半数を占めている。日本は、世界でも有数の女性が活躍する社会に生まれ変わったのだ。
 もっとも大きな変化は、人口動態だ。人口減少は2025年に上昇に転じ、2050年の総人口1億5千万人超えが見込まれる。人口増は経済成長を促し、日本経済は、年率4・5%で力強い拡大を続けるようになった。いったい、2016年と2050年の間で日本に何が起きたのか。これこそが、本書の主題だ。
 2017年、危機が勃発する。アベノミクスは失敗、膨大な公債残高の償還可能性に不安を抱いた投資家が円建て資産を売却、資本逃避が始まる。窮した日本は、IMF国際通貨基金)管理下に入る。衝撃的なのは、サムスンによるソニーの吸収合併だ。日本産業の凋落(ちょうらく)は、ついにここまで来たのだ。国家の存立危機を前に、国会は「特命日本再生委員会」の創設を決める。委員会は、(1)女性の就業率の向上、(2)計画的な移民の導入、(3)バイリンガル化、(4)再生可能エネルギーを中心とするエネルギー独立、(5)新しい経済産業モデル、(6)連邦制導入による徹底した分権化などを提言。これらを実行に移すことにより、日本は明治、終戦後に続く3度目の経済的奇跡を自ら実現することに成功するのだ。
 以上はすべて、かつての日米貿易摩擦時の対日交渉官であり、いまや日本の将来を案じる著者のシミュレーションだ。実現するもしないも、すべては我々自身の手にかかっている。日本の社会経済システムの本質を突いた数々の問題点の指摘、重く受け止め、日本の行く末を考えたい一書だ。
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 Clyde Prestowitz 41年米国生まれ。経済戦略研究所所長。『日米逆転』は両国でベストセラーに。
    −−「2050 近未来シミュレーション日本復活 [著]クライド・プレストウィッツ [評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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覚え書:「鮎川信夫、橋上の詩学 [著]樋口良澄 [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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鮎川信夫、橋上の詩学 [著]樋口良澄
[評者]蜂飼耳(詩人・作家)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]文芸 
 
 戦後、詩の雑誌「荒地(あれち)」の中心メンバーとなり、詩と批評の執筆に力を注ぎ、現代詩の歩みに大きな影響を与えた詩人・鮎川信夫。今年は没後三十年だ。
 本書は、その詩と背景に踏みこむ労作。著者は編集者として晩年の鮎川に接した経験を持つ。そこから発する視点と、作品や資料から汲(く)み上げられた考察が絡み合い、従来にない鮎川論が生まれた。
 鮎川は一九四一年秋の時点で日本帝国の滅亡を確信し、日記に記す。その後軍隊に入営。戦地へ行くが、病を得た結果、生き延びた。その思考と思索は「囲繞地(いにょうち)」「橋上の人」や『戦中手記』、斬新な詩論の数々として結実する。
 著者は、鮎川の在り方に「個に内在する普遍を探る態度」を見る。鮎川は自らの体験と〈他者〉や〈歴史〉を架橋しようとするが、その難路こそこの詩人にとっての〈詩〉だったという指摘は重く響く。いまこそ読まれ直すべきこの詩人への入り口となる書だ。
    −−「鮎川信夫、橋上の詩学 [著]樋口良澄 [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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覚え書:「「与党支援せず」 生長の家表明 首相の姿勢を批判」、『朝日新聞』2016年06月11日(土)付。

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「与党支援せず」 生長の家表明 首相の姿勢を批判
2016年6月11日 

 宗教法人生長の家」は9日、安倍晋三首相の政治姿勢に反対し、参院選で与党とその候補者を支持しないとする方針を発表した。

 方針は、安倍政権を「民主政治が機能不全に陥った時代の日本社会を美化するような主張を行っている」などと批判。「日本を再び間違った道へ進ませないために、明確に『反対』の意思を表明する」とした。

 生長の家は、憲法改正運動を進めて安倍政権を支持する「日本会議」の事務総局幹部らがかつて属していた。これに対し、今回の方針は「日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質で、時代錯誤的だ」としている。

 生長の家は、創始者谷口雅春総裁のもとで反共路線をとっていた1964年、政治連合を結成し、玉置和郎氏や村上正邦氏ら国会議員を出した。自民党の支持母体の一つとして影響力を持っていたが、83年に政治運動から離れた。

 その後、教団の運動のあり方や歴史認識を見直し、現在は谷口雅宣総裁のもと、脱原発の立場から環境問題に取り組み、安全保障関連法には反対を表明した。一方で、教団は「政治運動を再開するわけではない」としている。
    −−「「与党支援せず」 生長の家表明 首相の姿勢を批判」、『朝日新聞』2016年06月11日(土)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12404005.html


 

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